「月経の話」はタブーの日本 五輪選手と産婦人科医が「女性と思春期」の今を考える
男子選手とは異なる悩みを抱える女子アスリートの体について考える「THE ANSWER」の連載「私とカラダ」。今回は元競泳日本代表で五輪に2度出場した伊藤華英さんが登場し、日本スポーツ協会公認スポーツドクターの産婦人科医・江夏亜希子氏(四季レディースクリニック院長)と対談。アスリートと医師という異なる立場から、月経との付き合い方、ピルの服用の是非など、競技に打ち込む女性に起こる体の問題について話してもらった。全3回にわたる第1回は「女子アスリートと月経の現状」。
元競泳代表・伊藤華英さんと産婦人科医・江夏亜希子氏が語る「女性の体」問題/第1回
男子選手とは異なる悩みを抱える女子アスリートの体について考える「THE ANSWER」の連載「私とカラダ」。今回は元競泳日本代表で五輪に2度出場した伊藤華英さんが登場し、日本スポーツ協会公認スポーツドクターの産婦人科医・江夏亜希子氏(四季レディースクリニック院長)と対談。アスリートと医師という異なる立場から、月経との付き合い方、ピルの服用の是非など、競技に打ち込む女性に起こる体の問題について話してもらった。全3回にわたる第1回は「女子アスリートと月経の現状」。
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
伊藤さんは北京五輪で月経が重なった経験を持つ。当時の話は昨年に自身のコラムでもつづり、反響を呼んだ。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に務める傍ら、スポーツ庁、東京都などで保護者や指導者を対象に「女子選手と思春期」をテーマに講演も行っている。一方、江夏氏は自身も大学時代まで水泳に打ち込み、日本水泳連盟の連携組織、日本水泳ドクター会議のメンバーとして水泳日本代表のチームドクターを務めた経歴を持ち、女子選手のサポートを手がけてきた。伊藤さんとは代表チームで出会い、現在はかかりつけ医として親交がある。そんな2人が明かした、スポーツ界における女性問題の現状とは――。
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――近年、「女子アスリートと月経」の問題がスポットライトを浴びるようになりました。実際の現場では、どういう現状にあるのでしょうか。
江夏「まず、私の経歴を交えてお話しますと、もともと大学まで水泳選手をやっていました。中学時代、オーバートレーニングで体調を崩したことからスポーツドクターになりたいと思い、医者になりました。思春期から月経痛が強く、月経時に泳いでいいのか周囲から相談されることも多かったことも影響して、産婦人科を選びました。ただ、20年以上前の当時、スポーツ医学で産婦人科が関わっているのはマタニティースイミングくらいでした。水泳選手をはじめ、スポーツ選手が“女性性”に関して困っているとあまり気づかれていなかったんです」
伊藤「当時はそんな感じだったんですね」
江夏「『マラソン選手くらいに体を絞ったら、そりゃ、月経は止まるよね』くらいの感覚。本当にそんなレベルでした。でも、いろんなデータが積み重なった結果、月経が止まるほど体を追い込んだら、それは女性ホルモンが出ていないことの表れだから骨がもろくなる、そんな状態で負荷をかけると疲労骨折になると分かってきました。これは体操選手、陸上の長距離選手のように体を絞りすぎのアスリートに見られる傾向です」
伊藤「水泳選手はまたちょっと特殊ですよね」