正常月経と無月経で同じ練習をしたら… 鈴木明子が「衝撃だった」女子選手の研究結果
選手、指導者は月経とコンディション管理にどう向き合うべきか
これを受け、須永教授は海外で行われた研究結果をもとに正常月経の重要性を説いた。
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須永「競泳で無月経の選手と正常月経の選手が全く同じトレーニングをして12週間後、400メートルのタイムトライアルの結果、パフォーマンスの変化を見ると、正常月経の選手は泳速度が上がり、無月経の選手は下がってしまった。『なぜ?』と思うかもしれませんが、視床下部は様々なホルモンをコントロールしており、体の調子を整える代謝調節ホルモンにも関係しています。パフォーマンスの変化には様々な要因があり、一概にホルモンの変化だけでは説明できませんが、無月経は病気であるという認識が必要です。正常な月経を維持しながら、健康な状態でトレーニングに取り組むことが、最終的に良い結果につながっていく。無月経はトレーニング、パフォーマンスに悪影響を及ぼすと考えられます」
また、女性アスリートも悩ませるのが、強い生理痛が出る月経困難症。原因は2つあると須永教授が解説した。
須永「機能性月経困難症が割合では多いです。子宮が収縮する時に出るプロスタグランジンという物質が出すぎてしまい、お腹が痛むもの。もう一つの器質性月経困難症は卵巣などに病気があり、生理の時にお腹が痛むもの。痛みがあるのは当たり前ではありません。練習、日常生活に支障をきたす痛みは病気になります。対処として、まずは市販の薬を試す。治らなければ婦人科の受診を勧めます。私は痛みを我慢して練習する選択肢はないと思っています。フォームも変わってしまうし、100%の力を発揮する時に痛みが邪魔したらトレーニング効果自体が下がってしまうと感じます」
ただでさえ、口に出しづらい月経の話題。選手、指導者は月経とコンディション管理にどう向き合うべきか。鈴木さん、伊藤さん、須永教授がそれぞれの立場から考えを語った。
鈴木「私の場合、コーチが男性だったので、より(症状は)分からなかったと思います。だから、練習の際に『今日、生理が来ました』と伝えていました。『動きが重たいな』『お腹が重いな』と思っているのに、練習で追い込まれると、ぶつかり合いにもなってしまいます。年齢的に20歳を過ぎて、大人になったら言えるようになりました。最初は『なんだ、言い訳か』と思われるかもしれないけど、20歳を過ぎてから言えるように……。そういうコミュニケーションは選手本人だけではなく、大人、周りの人が生理のことを正しく知ろうとしないといけないと感じます」
伊藤「コミュニケーションと信頼関係が、競技をしていく上で大きく関わってくるもの。特に10代は選手、指導者、保護者という3方向のコミュニケーションが大事になりますよね」
須永「鈴木さんの場合は男性指導者でしたが、女性指導者でも月経痛がある人とない人がいて、女性だから分かってもらえると話をしたら『生理痛で休むなんて』と言われる選手もいます。月経痛もそうですし、月経周期に伴うコンディション変化は個人個人違うので、最終的には一人一人、その日その日の状態に応じて声かけをしてもらえるといいのかなと思います」