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「生理ってそんなにハードルが高い話?」 陸上・新谷仁美がありのままに語る選手の生理

日本長距離界のエースとして活躍する新谷さん【写真:Getty Images】
日本長距離界のエースとして活躍する新谷さん【写真:Getty Images】

根深い家族間の問題「他人が手を出せない。そこが変わらない限り、ずーっとこのまま」

「『競技をやめれば生理なんてくる』といった生理を軽んじる発言は、選手の親からも未だにあります。むしろ指導者のほうが、例えば練習日誌に生理日を書かせるとか、『自分ではわからないから産婦人科に行け』と言うようになったりとか、表面的な部分があったとしても、変化しています。

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 子どもは親の言葉が正解、世が間違っていると思ってしまうので、一番きつい。また、選手側も親に余計な心配をかけたくないと考え、生理が止まっても相談しない子がいると思う。しかも、家族間の問題は他人が手を出すことができない。でも、そこが変わらない限り、正直、ずーっとこのままなのかなって思います」

「生理を否定することは女性であることを否定すること」。新谷さんはストレートに断じる。

「私は母や中学・高校の恩師から、スポーツをしている・いない関係なく、生理があることは生きるうえで必要であり、自然であることを周囲から教えてもらいました。私自身、生理があることをマイナスに感じたことはないし、むしろプラスに働いたこともあります。

 だから、生理をマイナスと捉える、風潮を変えたい」

 新谷さんの生理の捉え方は、子どもの頃からポジティブだ。

 初経を迎えたのは中学2年のとき。それは彼女にとって待ちに待った瞬間だった。

「友達は早い子だと小6できていたので、その頃から母に『私も生理が欲しいっ!!』とねだっていました。やっぱり早かった子って、背も高くて、体形も大人で、いいな~と思っていたんですよね。生理がきたら、私も女のコっぽくなれるんだと、何となく感じていたんです。

『もうちょっとしたらくるよ。そうしたらお赤飯炊こうね』と母に言われると、生理がくるって誕生日的なことかな、すごいことなんだなって思いました。

 中2で初めて生理がきたときは母に向かって、『キターーッ!』って感じでパンツを見せました(笑)。これで私もみんなと同じだって、うれしかった」

 新谷家では、生理の話は「隠すもの」ではなかった。例えば中学時代、陸上のほか、水泳、バトントワリングをやっていた新谷さんは、体にぴったりしたウェアを着ていたため、「生理だから衣装を着るとお腹が出ちゃうんだよね~」と、父や兄の前でも、母との会話で生理に触れることは日常だったという。

新谷さんのなかに強く残る母の言葉とは【写真:松橋晶子】
新谷さんのなかに強く残る母の言葉とは【写真:松橋晶子】

 また、新谷さんのなかには、高校時代、母に言われた言葉が強く残っている。

「『学問は0点でもいいのよ。人間としての常識とマナー、生きるうえでの強さは、お母さんが生きている間に、仁美もしっかり準備してね』と母に言われました。『強さって何?』と聞くと、母は『たくさんあるけれど、生理もその一つよ』と答えた。

 その頃、本格的に陸上に取り組み始めたので、練習量が一気に上がり、体にかかる負担も増えていました。生理不順になりやすい環境だったので、『生理をなくしちゃいけないんだよ、なくてラッキーと思わないでね』という母のメッセージだったと思います」

 中学、高校の恩師の存在も大きかった。個人ミーティングで生理中だと報告すると、「きちんと生理を保てるように、メンタルからケアしろよ。先生も練習内容をしっかり考えていくからな」と言ってくれた。

「恩師は二人とも男性です。個人ミーティングでは、体の状態から学校生活まで、ちょっとでも不安に思うことは、素直に話すことができました。やっぱり先生とコミュニケーションが取れる、助けてもらえるって、心強いんです」

 昨年、高校の恩師から「新谷がチームのトップ選手でよかった」と伝えられた。当時、チームの中心だった彼女が、生理の大切さを当たり前のように発言したことに感謝している、と。

「高校のチームは私がトップ選手だったので、チーム作りも私に合わせて行っていました。『もしも生理に否定的な考えを持つ選手がトップだったら、自分もその選手に合わせて、生理を否定する人間になっていたかもしれない。新谷がトップでオレは運がよかった』って。その言葉を聞いて、すごくうれしかった」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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