伊調馨が語った女子選手の体重管理 核心を突いた「自分の体に興味を持つ」のアドバイス
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第22回は前回に続いて「女性スポーツフォーラム2021回顧」。
連載「女性アスリートのカラダの学校」第22回―「女性スポーツフォーラム2021回顧」
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第22回は前回に続いて「女性スポーツフォーラム2021回顧」。
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去る2月6日に開催された、日本体育大学主催のオンラインイベント「女性スポーツフォーラム2021」。アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロと、4大会連続で金メダルを決めた女子レスリングの伊調馨さん(ALSOK)を招き、「金メダリストに学ぶ! アスリートとコーチが知っておきたい女性アスリートのコンディショニング」をテーマに、様々なお話を伺いました。
当イベントでは私も伊調さんと「月経」と「体調管理」を軸に対談。その内容をこの連載で2回にわたりお伝えしています。前回の「月経」に続き、今回は体重管理とコンディショニングについて、伊調さんのコメントを振り返りながら、お話していきましょう。
レスリングのような階級制競技では、出場資格を得る条件の一つに体重があります。伊調さんは、高校時代は56kg級、アテネからロンドン五輪では63kg級、リオでは58kg級と、その時々の大会のルールに合わせて階級を選択し、試合に臨んできました。
伊調さんの場合、苦労されたのは減量ではなく増量だったそうです。彼女のベストは60kg。しかし、「63kg級に出場する選手は、試合では67、68kgある。自分もせめて63kgないと戦えないため、ご飯をたくさん食べたり、筋トレを増やしたりと工夫してコンディションを作っていった」そうです。
東京五輪出場を目指していた当時の階級は、57kg級。60kgがベストの彼女にとって2~3kgの減量はそれほど難しいことではなかったそうです。
「普段の練習で1.2~1.5kgは落ちる。最後は着こんで汗を流す、摂取する水分量を減らせば、2kg近く落ちます。あとは睡眠でどのぐらい減るかなど計算しながら計量までの2、3日で体重を調整していた」とのこと。
そして、一番大切にしていたのは、「普段はあまり体重を気にせず、食べたいものを食べて体を作り、試合の直前に少し絞り、計量をパスする。大事なのは体重ではなく、体の中身。筋量を増やして脂質を減らし、戦うための体のベースを作ること」とお話しされていました。
ここで最も大事なのは、「重さではなく中身が大事」というメッセージです。コメントを読むとわかりますが、伊調さんは「自分は何をしたら、どのぐらい体重が減るのか・増えるのか」をよく知っています。普段から食べる物や量を制限するのではなく、何をどれぐらい食べると体はどう変化するのか? 調子のよいときはどのぐらい体重があるのかなど、「数字」だけではなく「状態」を総合的かつ客観的に把握する。
それによって、一時的な「数字」の変化に振り回されることなく、自らのコンディションと向き合い、うまく体重をコントロールすることに、つながったのだと感じます。