「タンポンを使ってまで続けたくない」 女性アスリートと「思春期の体の変化」の現実
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第15回は「思春期の体の変化」について。
連載「女性アスリートのカラダの学校」第15回―「思春期の体の変化」について
スポーツを習い始めたばかりの小学生、部活に打ち込む中高生、それぞれの高みを目指して競技を続ける大学生やトップカテゴリーの選手。すべての女子選手たちへ届ける「THE ANSWER」の連載「女性アスリートのカラダの学校」。小学生からオリンピアンまで指導する須永美歌子先生が、体やコンディショニングに関する疑問や悩みに答えます。第15回は「思春期の体の変化」について。
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
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思春期に入ると、大きな壁にぶつかる女性アスリートは少なくありません。
女性は初潮を迎える頃から急に背が伸びはじめます。そして、子どもの体から、大人の女性の体へと成長。その過程で、体のバランスが変化し、今まで当たり前にできていたことが、急にできなくなるためです。
男子は思春期になると、背が伸び、筋肉がついてきて、自然とアスリート向きの体になっていきます。でも女性の場合、背は伸びますが、胸やお尻に皮下脂肪が増えて丸みのある体形になり、アスリートとしては不利な体つきに変化。また、生理も始まり、コンディションをコントロールすることも難しくなります。
それらのことが原因で、小さい頃から好きで続けてきた競技をやめてしまう選手は少なくありません。例えば、体操やフィギュアスケートのような審美系の競技は体重や体形の変化が引き金に、水中競技である水泳では「タンポンを使用してまで続けたくない」と、生理用品が原因でやめる生徒もいるのです。
現在、日体大大学院の博士課程に在籍するMさんも、成長期の体形変化を乗り越えることのできなかった一人です。
4歳から水泳を始め、「子どもの頃は練習をすればするほどタイムが伸びた」というMさん。小学6年生時には全国大会で6位に入賞するほどの実力者でした。しかし、中学3年生のとき、突然、スランプに陥ります。中3の初めに初潮を迎えると、1年間で体重が5kg増加。泳ぎ方を模索したり自分なりにトレーニングを工夫したりするものの、調子は一向に上がりません。
さらに、練習に行こうとするだけで熱が上がり、休んだ途端、平熱に戻るということが繰り返され、「もう水泳はやめよう」と考えるようになります。結局、水泳で推薦の話が来ていた私立高校への進学を断念。進学した公立高校でも水泳は続け、3年間全国大会にも出場しましたが、「大学、その先も水泳を続ける夢は、中3で諦めた」と話します。
彼女は月経周期の影響を非常に受けやすい体質で、生理になるといつも腹痛に苦しんでいたそうです。ところが、当時は「生理による痛み」である自覚はなかった、と言います。大学で私の授業を受けて初めて「調子が悪くなったのは月経の影響だったのか」と気づいたと言います。
Mさんはインターハイなどでも活躍しましたが、水泳競技者としては高校卒業とともに引退。現在は「スポーツ医・科学の分野から女性アスリートをサポートしたい」という思いをもって、私の研究室で月経周期の研究に取り組んでいます。