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「可愛すぎるアスリート」と呼ばれて 28歳になった重量挙げ・八木かなえが今語る本音

八木は期待と目標のギャップに悩みを抱えたという【写真:ALSOK】
八木は期待と目標のギャップに悩みを抱えたという【写真:ALSOK】

周囲は“メダル獲得が目標”を前提、八木の「取材が嫌ではなくなった」理由とは

 決して注目を全面的に嫌っていたわけではない。注目度や人気に比例して、企業などのサポートが増すスポーツ界。メディアに取り扱ってもらう機会が増えれば、競技の普及や選手の活動の幅が広がる。10代の八木もこれを理解していた。

 ただ、悩みを抱えたのは期待と目標の乖離だった。

「そこが大きかったです。オリンピックに自分が出られるような選手じゃない時も、オリンピック出場を期待されてしまうことが多かったですね。オリンピックに1回出たら、次はメダルと言われるようになる。実力とのギャップのようなものはありました。

 メダル候補と言われると、応援してくれる人もメダルを期待するわけじゃないですか。そういう時に獲れなかったり、できなかったりした時に凄く申し訳なく感じる。自分の目標と同じくらいの扱いだったら、それはそれで頑張れたのかもしれないですけど、プレッシャーに感じることも多かったですね」

 おっとりとした口調で10年ほど前の自分の気持ちを思い返した。

 高校3年だった2010年、金沢学院大に進学した2011年もロンドン五輪は「全く出られるとも思っていなかったですし、そもそも出ることが目標でもなかった」という。24歳で迎えるリオ五輪がターゲットだった。しかし、ロンドン五輪の選考会を兼ねた2012年4月の全日本選手権で初優勝。真夏の祭典への切符を予期せぬ形で手にした。

 五輪出場の目標達成がリオから4年早まり「一歩早く叶えたので(五輪本番で)経験を積みたいというのもあったし、自分のいい記録を出したいなというのもあった」と上方修正。順位よりも自己記録の更新を心の真ん中に置いた。

 しかし、周囲は違う。取材で聞かれる質問は“メダル獲得が目標”という前提の上に成り立つものが多かった。メディアにとっては、少しでも大きく扱い、視聴者や読者に見てもらうには「メダル候補」「期待の星」など、人の興味を引く切り口が必要である。

 八木も決してメダルが必要ない、獲りたくないというわけではない。自分が熱中してきた競技の魅力を知ってもらえることは、ありがたいことだと感じていた。注目されることで応援してくれる人も増え、支えを実感できる。ただ、12位で終えたロンドン五輪以降、期待と目標のギャップはリオ五輪にも続いていった。

 前向きに捉えられるようになったのは、社会人になってからだった。普段は母校の須磨友が丘高で練習する。メディアに出演すると、「先輩、この前見ましたよ」と後輩たちに話しかけられることが増えた。八木の存在を知り、ウエイトリフティングを始めた子もいる。競技の知名度も上がり、少しずつ競技人口が増えていることを実感できた。

「テレビに出たら後輩たちが凄く喜んでくれて、競技を知ってもらうにはこういうことも大事なんだなと。それから取材なども嫌ではなくなりました。『憧れて入りました』とか、そういう子たちが最近多くなってくれている。メディアに出ることでウエイトリフティングを知ってもらえて、その嬉しさの方が大きくなってきたのでやりがいも生まれてきたと思います」

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