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松井秀喜に助けを求めた日本人 アフリカ野球衰退の危機、職を捨てニューヨークに飛んだ

アフリカ野球の試合風景、選手たちは懸命にプレーしている【写真:J-ABS提供】
アフリカ野球の試合風景、選手たちは懸命にプレーしている【写真:J-ABS提供】

アフリカ人に問いかけ「なぜ、『キャッチボール』と呼ぶんだ?」

 今年はタンザニアのほか、ガーナ、ケニア、ナイジェリアでも男女の甲子園大会開催を目指す。その中で「キャッチボールで世界を平和に!」がテーマの一つ。友成さんは「日本人でこんなことを考える人はいない」と言って、キャッチボールの“本当の意味”を説いてくれた。

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「キャッチボールで大切なことは何?と聞かれたら、日本の野球人のほぼ100%が『相手の胸に投げる』と答えます。でも、キャッチボールをやったことがない人に教える時には何が大切か。コミュニケーションなんです。

 私が相手に軽くボールを投げた時、胸に来たら捕りますよね。これが日本人の常識なんです。でも、アフリカ人は胸に来たらトラップするんですよ。『ボールはトラップするものでしょ』って。これがサッカーがメジャースポーツのアフリカの常識です。

 ボールは捕るものだと知らない人たちに伝えるのが第一歩。知らない人に投げるには、『Let’s play catch!』と言わなきゃいけない。そうすればトラップはしません。声かけから始めるんです。言われた側は『OK!』と返す。相手に『OK』と言われて初めて投げます。発信だけじゃダメ。発信が伝わったことを確認しなきゃいけない。コミュニケーションの取れる社会になれば、世界が平和になります」

 アフリカの野球指導者たちには、こう語り掛ける。日本人が忘れがちなことだった。

「OKを受け取って初めてコミュニケーションが成立する。その1往復が大切なんだよ。これは社会で最も大切なことの一つ。社会に出た時、みんなが自分の主張ばかりしても相手は認めないよね。キャッチボールを思い出そう。

 なぜ、『キャッチボール』って呼ぶんだ? ボールを投げることから始めるんだから、『スローボール』でいいじゃないか。違う。キャッチから始めるのが大切なんだ。社会に出ても同じ。まず相手を受け止める。これが平和な社会をつくっていくことに大切なコミュニケーションの基礎なんだ」

 アフリカ社会の発展、平和に繋がるキャッチボール。「野球がアフリカ社会を変えていきます」。友成さんは日本で生まれた一人の野球人として、本気で信じ、取り組んでいる。

【世界の野球に望む未来】

「アフリカ野球が、世界の理想になるといいなと思っています。スポーツには勝利が目的の一つにありますが、それは相手と昨日の自分に勝つことです。つまり成長すること。日本の高校野球では、勝利に執着しすぎていると言われがちです。部員の多い学校では、勝つために控えにチャンスが回ってこない。学ぶ機会を損失しています。みんなにチャンスがあるのが野球の良さ。勝利を目指して一生懸命やりながら自分たちが成長する。

 これを長く続けるには、楽しまないといけない。アフリカでは『歌おうぜ!』と踊りながらウォーミングアップをします。入場行進も歌って踊る。でも、誰かが話す時はビシっと真剣に聞く。大切なのは、歌って踊りながらでも歩調を合わせること。楽しみながら規律、尊重、正義の心がある。エンジョイベースボールの精神が世界中に広がってほしいなと思います」(J-ABS代表理事・友成晋也さん)

※「THE ANSWER」ではWBC期間中、取材に協力いただいた皆さんに「世界の野球に望む未来」を聞き、発信しています。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)


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