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松井秀喜に助けを求めた日本人 アフリカ野球衰退の危機、職を捨てニューヨークに飛んだ

南スーダン野球の「パイオニア」の子どもたち【写真:J-ABS提供】
南スーダン野球の「パイオニア」の子どもたち【写真:J-ABS提供】

内戦が続く南スーダンに野球連盟創設「歪み合う民族が一緒になって…」

 当時の金銭感覚は日本と20倍ほど違ったという。そんな機会が失われた五輪競技からの除外。「モチベーションに関わります。日本人が国際大会に出るのとは、価値が違いますよね」。選手が少なくなれば、全体のレベルも下がっていく。

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 2021年東京五輪のアフリカ予選は4か国に減った。ウガンダからは初めてMLB契約選手が生まれたが、WBCは一度もアフリカ予選が実施されたことがない。2010年代後半からアフリカのどの国でもスマホが普及し、野球経験者にはMLBやWBCも知られるようになった。それでも、マイナー競技の域を出ない。

「もう少しアフリカにチャンスをもらえたら違ってくるかもしれません。ただ、マイナースポーツなので、国内でも五輪種目より圧倒的に存在感がない。国の予算を配置してもらえるだけの価値にはなっていません。だから、WBCがサッカーW杯みたいになるには、まだまだ時間がかかると思います」

 それでも、野球の火を絶やすわけにはいかない。目標があれば、より一生懸命になれる。自身は高校、大学と慶応でプレーした元球児。「五輪がなくても、日本の選手たちは甲子園を目指している。だったら、各国で日本の甲子園のような大会をつくればいい」。冒頭の通り、2014年にタンザニアで初開催。本文に置いたのは「人づくり野球教育」だった。

「ガーナとタンザニアの子どもたちはグラウンドでリーダーシップを取り、規律や社会性を学ぶと、勉強の成績が副次的に上がりました。規律、尊重、そして何が正しいことかを考える正義。タンザニアでは、この3つをスローガンに掲げました」

 タンザニアに野球連盟を創設。教育関係者から「規律、尊重、正義。それこそが子どもたちに必要なことだ」と声が上がり、各校に野球が広まっていった。

 さらに友成さんは2018年、今度はJICA南スーダン事務所の所長として同国に勤務した。2011年にスーダン共和国から独立以降も内戦が続いていた国。タンザニアで確立した「人づくり野球教育」を一から説いた。

「これが南スーダンの人たちに凄く響きました。『紛争に明けくれるこの国に必要なことだ』と言ってくれて。歪み合う民族の人たちが、一緒になって野球連盟を立ち上げてくれたんです」

 子どもたちは平和を知らない。でも、グラウンドに立てば表情が変わった。絶対に自分の番が回ってくるバッターボックス。難民キャンプに収容された経験を持つ子も、夢中になってバットを振った。チャンスが平等に訪れる民主主義を知り、「規律、尊重、正義」を学び、人としても成長する。野球の秘めた可能性だった。

 友成さんはアフリカ野球連盟に対し、JICA海外協力隊に野球隊員の派遣を求めるように助言。徐々に各国で野球を教える人が増えてきた。しかし、隊員が帰国すると、継続が難しい。

「いつまでも海外支援が必要スポーツは、いずれ死んでしまいます。だからこそ、自律的に発展できる仕組みを作らないと。それが私たちの事業です」

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