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ラグビー日本に吹き始めた4年前の旋風 格上アルゼンチンと天王山、命運握る「FW第3列」の奮闘

今大会絶好調のFW第3列がどこまで対抗できるか

 チェイカHCは2年あまりと短期間だったが、リーグワンのNECグリーンロケッツ東葛で今年2月まで強化責任者のディレクター・オブ・ラグビーを務め、日本ラグビーをよく知っている。チリ戦後の会見で、日本との決戦について「初戦でイングランドに敗れてから、段階的に良くなっている。今は恐れるものはない。だが、前回の大会で決勝トーナメントに進んだのは我々ではなく日本だ。強い相手だが、我々も勝利(決勝トーナメント進出)に飢えている」と意気込みと自信を語っている。

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 アルゼンチンのラグビーを簡単に説明すると、フランスとともに非英語圏諸国の雄として世界に挑んできた。サッカーが常にナンバーワンスポーツの国だが、ラグビー協会設立は1899年と歴史は古く、英国系諸国からも移住者がいたこともラグビー普及に影響している。独自のスクラムの組み方で強豪にも対抗するなど、伝統的にはFW中心のスタイルが持ち味だった。

 フランスが舞台だった2007年W杯で、いわゆるホームネイションズと呼ばれる伝統国以外で初めて準決勝まで勝ち上がり3位と躍進。2012年には現在のラグビー・チャンピオンシップに加入したことで、ニュージーランドら南半球勢特有のボールを展開するアタックも吸収してきた。

 選手を見ると、その2007年大会で天性のアタックセンスとキック力でチームの躍進を支えたSOサンチェスら世界クラスの選手を擁し、後継者と期待されるサンティアゴ・カレーラスも、滞空時間と長さを使い分けたキックを武器に、昨秋のイングランド撃破などで世界にポテンシャルの高さを印象づけた。プレースキックと身長190センチの高さが武器のWTBエミリアノ・ボフェッリも要警戒だ。

 伝統のFWでも、接点の激しさでワールドクラスの実力を持ち、日本の三重ホンダヒートでプレーするFLパブロ・マテーラや、運動量とパワーを兼ね備えるFLファン・マルティン・ゴンザレス、パワフルな前進と荒々しいプレーで威力を見せるLOトマス・ラヴァニーニなど、フィジカルと機動力を併せ持つタレントが居並ぶ。その豊富な素材が、前オーストラリア代表HCチェイカの就任で、より洗練された組織アタックを身に着けているのが現在の“ロス・プーマス”の姿だ。

 日本にとっては、D組でイングランドに次ぐ強敵だ。そんな相手を、どう克服するのか。

 まず注目したいのは、今大会絶好調と評価していいFW第3列が、どこまでコンタクトゲームで対抗できるかだろう。先にも紹介したように、ここまでのプール戦では驚異的なタックル回数をマークするが、その粘り強いワークレートで、マテーラやラヴァニーニと渡り合えるのかに期待がかかる。防御面ももちろんだが、日本の生命線であり、ようやく加速し始めたスピード感のあるアタックができるかは、密集戦でのFWの奮闘がキーポイントになる。

 サモアのようなシンプルに体の強さで挑んでくる相手には、圧力を受けながらも突進を食い止め、自分たちのテンポを掴んだ。サモア以上に組織的で、かつフィジカリティでも南半球強豪国と渡り合う南米の王者に、どう挑んでいくか。サモア戦からアルゼンチン戦までは中9日。サモア戦前も中10日と、1週間単位で試合が続くW杯では恵まれた準備時間を与えられた日本代表。その時間で、急速に選手のパワーや能力が伸びることはあり得ない。だが、このチームの武器になるプレーの精度アップのためには、有効に使いたい時間だ。

 間違いなくパワーや個人技では優位な相手に、日本が組織としていかに渡り合えるかというテーマは、ここまでの戦いと変わらない。接点での相手の圧力をどう食い止め、早い展開に持ち込めるか。ノックアウトトーナメントは、すでに始まっている。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)


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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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