「自分たちのグラウンドでもいい」 休止のラグビーTL、アマだからできる“危機対応”
現場から上がる声「最悪の場合は自分たちのグラウンドで試合をしても」
同時に、強化という観点でも検証が必要だ。2019年W杯で日本代表は過去にないベスト8進出という好成績を残したが、これが1年や2年の強化で達成されたのではないことは関係者なら誰もが認めるところだ。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチが昨年11月の続投決定時に「次のW杯に向けての準備は今日から始まっています。2023年のOne Teamの一員になりたいと思っている若い選手たちの皆さまも、今日から挑戦を始めることが大切」とメッセージを発信したように、大会翌年から選手の強化が始まり、チームのレベルアップには、従来になかった新しい力の発掘が欠かせない。
今季のTLには、先のW杯で活躍した日本代表メンバーをはじめ、ニュージーランド代表主将のNO8キアラン・リード(トヨタ自動車)、優勝した南アフリカ代表NO8ドウェイン・フェルミューレン(クボタ)ら一流選手が集まっている。才能を秘めた若手選手たちを、その世界レベルの選手たちとの真剣勝負で経験を積ませ、6月末から始まる代表戦でメンバーに選出することが、3年後のW杯フランス大会へ向けた日本代表の進化に大きな意味を持つ。
無観客試合を行うためには、入場料収入が0円の試合に、会場使用料や、試合運営スタッフなどの人件費もかかる。協会やチームの出費は避けられない。だが、ラグビーにはプロスポーツの興行ではないことのメリットもある。チームは入場料収入で運営されているわけではなく、無観客でもJリーグ、NPBほど“痛手”は深刻ではない。あるチーム関係者からは「試合のための移動や宿泊費はシーズン前から計上されている予算だし、無観客なら会社とチームが協会から購入する社員用チケット購入の出費はなくなるし、最悪の場合は自分たちのグラウンドで試合をしてもいいのでは」という意見も聞いた。
試合を主管するラグビー協会には、ラグビーブームによる大幅なチケット収入の増加がなくなることや、試合会場での看板などによる広告収入、無観客試合になることで生じる可能性のある放映権料の変更など問題はあるが、大局的な判断が求められるのは、昨秋のW杯で国内で起きた大きな熱気を、どう継承していくかだろう。
グラウンド内外で生じるコスト問題と、ラグビーがどう社会と関わっていくのか、そして日本ラグビーの進化という課題を、どうハンドリングしていくのか。ウィルス感染という“国難”で、ラグビー協会に、主導権を持って乗り越えなければならない課題が突き付けられている。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)