かっこいいぜ、八重樫東…懸命に悔いなく、命を燃やした激闘王「練習は死ぬまでやる」
記録より記憶の人間「気持ちが燃えるのはボクサーとして幸せ」
4月8日のノンタイトル戦。常々「負けたら引退」の覚悟で臨んできただけに、強いとは言えない相手を倒すと安堵感が体中に染みわたった。
【特集】“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」
(W-ANS ACADEMYへ)
「その日の練習にモチベーションを感じてやってきた。やっぱり怖いですよね。勝たなきゃいけない試合ですし、チャレンジする試合よりも恐怖心が大きいですね。まだボクシング人生を続けられるのは凄く嬉しい。きっと会長が大きい試合を組んでくれると思う。それを信じて一日、一日を過ごすしかない。まだボクシング人生が続くことは凄く幸せなこと。今を生きていきたい。
僕は記録の人間ではない。欲を言えば記憶の人間。みんなの記憶に残る試合がしたいし、燃えるような気持ちになれるのがボクサーとして幸せなこと。14年やってきたので、会長も最後に花道を作ってくれると思う。最後まで付き合ってくれるのかな。自分の中ではいつ集大成になってもいい。向かうところは一つ。終わりに向かっている。そこに向かって今を生きていきたい」
巡ってきた世界戦のチャンスはフライ級。4階級制覇にはならないが「誰とやるか」と敵を見据えた。被弾数が増えていった8回。相手と距離ができ、一瞬の間を置いて叫んだ。「うあ゛ーー!」。大歓声の降り注ぐ横浜アリーナ。それでも、リングサイドに激闘王の叫びは響き渡った。だが、劣勢を打開できない。9回2分54秒。レフェリーにそっと抱きかかえられた。
「力不足です。止められたのは自分の力不足。相手が強かったというだけ。気合が足らなかった。今回は(3人の)子どもとか、家族とかではなく、全部自分のためだけにやってきた試合。そこで結果を出せなかったのは悔しいです。それもすべては自分の力のなさ、受け止めて考えたい」
進退を保留。「もう厳しいか」と問われた大橋会長は「ちょっとなぁ……」と下を向いた。今後については歴戦のダメージも考慮しながら、2人で話し合う方針。壮絶なファイトは見られないかもしれない。だが、八重樫東が命を賭し、激しく闘った姿は色あせないはずだ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)