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ワイルダーの劇的KOがヘビー級戦線にもたらす意味 見えた“最強の王者”への道筋

素直に敗北認めるオルティス「偉大なチャンピオンだ」

 それから約1年半。リマッチでも公式ジャッジの採点では3-0(58-56、59-55が2人)でオルティスはリードしていたが、結局は同じ結果に終わった。オルティスも間違いなく現役屈指の実力者だが、もう勝負付けは済んだのだろう。

「ワイルダーは偉大なチャンピオンだ。私は引退はしないが、これから先は他のヘビー級選手たちにこのフレストレーションをぶつけたい」

 オルティスは会見の場でそう語ってメディアたちを笑わせるとともに、敗北を素直に認めた。その瞬間までどれだけ苦しんでいても、ワイルダーの一発KOには運、不運の要素は感じられない。幸運ではなく、必然。“歴代最高級のパンチ”と称されるようになった右には、それだけの説得力があるのだ。

 今回のタイトル戦のリングサイドには、井上尚弥(大橋)が契約を結んだばかりの米最大級のプロモーター、トップランクの関係者の姿があった。アル・ヘイモン率いるPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンズ)の興行に、最大のライバルであるトップランクの人間が姿を見せるのは頻繁にあることではない。

 2社がラスベガスに集結した理由はただ一つ。来年2月22日、PBCの看板選手であるワイルダーが、トップランクと契約を結ぶ元統一王者タイソン・フューリー(イギリス)が再び相見えることが決まっているからだ。

「次はフューリーとの再戦だ!」

 ワイルダーもリング上でそう語り、ビッグマウスの“英国の雄”との戦いにすでに意欲を示していた。この2人は昨年12月にロサンジェルスで対戦し、フューリーがポイントでリードしたものの、ワイルダーが2度のダウンを奪ってドローに持ち込んだ。展開自体はワイルダー対オルティス戦と似ているが、フューリーが最後まで王者を苦しめたことで試合は劇的になった。今夜、ワイルダーが再び派手な形で仕事を果たし、因縁のリマッチへの最後の障壁はクリアされたのである。

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杉浦 大介

1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。

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