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もう一つのジャパン 7人制代表は東京五輪でメダルを狙えるのか? 現在地と課題

先日のW杯でベスト8の成績を残した日本代表【写真:Getty images】
先日のW杯でベスト8の成績を残した日本代表【写真:Getty images】

7人制特有の、15人制にはなかったハードルとは?

 ジェイミー・ジャパンは、今年2月から240日という強化期間で選手を鍛えて8強という成果を残した。他国ではあり得ない長期の強化時間は、今大会での日本の躍進の大きな要因だったことは間違いない。スローガンの“ワン・チーム”をまさに実現できたのだ。しかし、7人制には15人制以上のハードルがある。

 ワールドカップ日本大会へ向けて、15人制代表には多くのチームが理解を示し、サポートも惜しまなかった。所属選手が代表に招集されれば、当然その選手の能力アップが期待され、所属チーム名、つまり企業名の認知度アップに直結するメリットがある。しかし、7人制ラグビーはいまだ国内で認知度が低く、7人制で鍛えられるスキルや体力が、すべて15人制の強化に直結するわけではない。7人制でプレーをするための最適の体重や筋量が15人制で求められる数値とは異なるため、デメリットがあると考える指導者もいる。所属チームも諸手を挙げて全面バックアップとはいかない現実があるのだ。

 日本ラグビー協会では、7人制代表としての活動以外に、先に挙げたSDSを活用して強化時間を捻出するなどしてきたが、世界のトップチームが参戦するワールドラグビー・セブンズシリーズ2018-19シーズンでは15位に終わり、シーズン全大会に出場できる“コアチーム”から陥落。東京オリンピックへ向けた貴重なプレシーズンは、強豪国との真剣勝負を積む機会が大幅に失われる事態に陥っている。

 7人制ならではの問題を克服するために、日本協会も中心選手の所属チーム(企業)と出向契約を結び、7人制強化に特化した環境作りに取り組んでいる。長らく代表主将を務めてきた小澤大(トヨタ自動車)や15人制の15年ワールドカップメンバーだった藤田慶和(パナソニック)らが、実質上フルタイムの7人制選手として“東京”を目指している。

 チーム事情、企業の契約上の理由でフルタイムの専従ではないメンバーも、より多くの時間を7人制に専念できるよう、協会-所属チームでの話し合い調整が進められている。

 ジェイミー・ジャパンも、身体能力や経験値で劣る部分を年間240日の長期にわたる強化期間で補いトップ8という高みに立った。7人制代表の強化も、高いレベルでの実戦経験を積み上げることと、より多くの時間をチームとして過ごすことが重要なのは明らかだ。今回3位に輝いたオセアニア・セブンズでも、大会開幕前に、試合が行われたフィジーに先乗りして都合2週間の強化合宿(試合)を行い結果に結びつけている。

 メダルへの鍵を握るのは、どれだけ15人制に負けない“ワンチーム”になれるかだろう。そのために、より長く、より効果的な時間を作りだせるかが重要だ。“時は金なり”を実践できれば、金メダルの期待も高まってくる。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)


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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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