井上尚弥がドネア戦で見せた対応力 米記者が高く評価したメイウェザーとの共通点
光った井上の「アジャストする能力」
「いくら5階級制覇のドネアとはいえ、36歳。井上は最初、KO狙いだったと思う。でも、第2ラウンドで左フックを食らってから、それが変わった。ドネアが25歳だったら、間違いなく畳みかけられてKOされていた場面。(井上は)ドネアが2人に見えたって言っていたけど、感心するのはそこでも冷静にアジャストしたことだね。あそこから足をしっかり動かして、ジャブをうまく使いながら距離を取り、タイミングを図って右を打っていった。試合中に思わぬアクシデントがあっても、そこから勝ち方を見つけられる。このアジャストができるのが、トップ選手の証拠だと思う」
ここでヘルナンデス記者が引き合いに出したのが、プロ戦績が50戦50勝のフロイド・メイウェザー・ジュニア(米国)だ。メイウェザーが対戦した相手は「実力差がある選手も多かった」としながらも、試合中のアクシデントに即対応し、偉大な成績を残したことを指摘。「アジャストと言うと、頭の良さや機転の良さが重視されるけど、実行できるだけの技術がなければ成り立たない」と話し、メイウェザーも井上も、頭脳と技術を伴った類い稀な存在だとした。
「ドネアもアジャストしたね。第2ラウンド以降、明らかに左フックを避けてきた井上に対して、右を投げ始めた。9回には右を当てて、クリンチされる場面もあったでしょう。あそこは井上のアジャストに対して、ドネアがアジャストした場面。ここまで簡単に倒せない相手と、井上は今まで戦った経験はなかったんじゃないかな。最終的には、若くて体力のある井上が手数を増やす形でアジャストし直して勝ったけど、彼にとってはいい経験になったと思う」
一筋縄ではいかない老獪なドネアを相手に、キャリア初流血というアクシデントに見舞われながらも、冷静さを失わなかった井上。これまでにない試合を経験し、さらに選手としての器を広げたと言えそうだ。
(THE ANSWER編集部)