[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

カギを握るのは「日本人選手」 “元祖留学生”ラトゥ志南利のこだわりと理想

現在はパナソニックの営業マンとして活躍するラトゥ志南利氏【写真:吉田宏】
現在はパナソニックの営業マンとして活躍するラトゥ志南利氏【写真:吉田宏】

伝説の桜の戦士は今、“企業戦士”として活躍中

 現役時代と変わらないハスキーボイスで、よどみのない日本語がどんどん口をつく。街中では図太い首や腕、体の厚みは際立つが、温厚な話しぶりや優しいまなざしは営業マンとしての武器になる。肩書は空調広域開発営業部開発課主幹。大学など大型施設の空調が担当。「これから小中学校も冷暖房を設置していくから」と、巨体を揺らして全国を飛び回っている。

 開幕まで2か月を切ったワールドカップ。いまや祖国となった日本が舞台となる祭典の開幕を、ラトゥ氏は驚きの感情を抱きながら待つ。

「まさかワールドカップが日本に来るとはね。思ってなかったことです。第1回大会からプレーしてきたが、その当時だって、いつか日本に来るなんて考えたこともなかった。決まったときは驚いたけど、それだけ日本のラグビーが強くなったということですよ。世界が実力を認めてくれたと思います」

 まぶしそうな表情で、桜のジャージーの後輩たちについて語ったラトゥ氏だが、海外出身ながら日本代表の中心選手となり、日本人にもなった男には、独自のジャパンへの思い入れがある。

「僕の時代、代表でプレーする外国人は2、3人だった。みんな長く日本で生活をしていた選手ばかり。僕自身、外国人であり日本人という立場で難しい部分もあるけれど、僕の時代の人数なら、みんなこれは日本のチームだと認めてくれていたと思う。でも、いまのように半分以上が外国出身者だと『どこの国の代表?』と思われてしまうこともある」

 外国人選手でも国代表になれるというスポーツ界でもユニークなルールについては、ラトゥ氏もその柔軟さ、寛容さを認めている。現在の日本代表も、規約に則り外国人選手を選考している。その一方で、トンガ時代より長くなった日本での生活の中で、日本人の価値観、考え方を知り尽くすからこそ、感情論としての“日本人選手”が代表でプレーすることの重要さを感じ取る。

「ラグビーのルールをあまり知らない人には、『あのオールブラックスでもフィジーやサモア、トンガから来た人たちが入って世界最強のチームになっている。その国でプレーすれば代表に選ばれるのは、ニュージーランドでも日本でも同じことだ』と話しているんです。でも、納得できない人の気持ちもわかる。これは気持ちの問題だから。何人(の外国出身者が代表戦に出場できる)かは決めてほしいなとは思いますね」

 その日本人としてのこだわりは、代表強化にも及ぶ。

「サンウルブズがスーパーラグビー(SR)に参戦したときも、僕の考えは日本人選手を鍛える場なんですよ。だから負けてもいいんです、SRを日本選手に経験させることができれば。でも、蓋を開けてみたら、最近は日本人選手はほとんどいないじゃないですか。日本代表にも関係ない選手ばかり。勝つことを優先して、という説明は聞いたことはあるけれど、成績も残せていない。もっと将来日本代表になるような日本人にプレーしてほしいというのが僕の思いです」

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集