寺田明日香、6歳愛娘を泣かせた日本新 母娘で破った0秒01の壁「彼女の成長を感じる」
「大好きだよ。頑張ってね」、レース前にもらった手紙を財布に入れて出陣
勝利後に一緒に写真を撮るのは、母娘の約束だった。寺田が19年9月に日本記録を出した際は一人で撮影。娘に「ずるい!」と言われた。海外選手が優勝した時に家族でウィニングランをしているシーンを見たことがあったから。「私もやりたいんだけど」と嫉妬されたため、ママは「私が勝ってタイムを出した時、かつ彼女がそばにいる時はやってあげたいなと思っていた。叶えてあげられて良かった」と強さを見せて喜ばせた。
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この日の朝は「1番がいいよー!」と激励されて別れた。しかも、「だいすきだよ。がんばってね」と書かれた手紙付き。つたない字の宝物を財布にしまい、雨の降る予選を走り抜けた。広島市内は気温15度前後と肌寒く、地面の濡れた悪条件。しかし、決勝が近づくにつれて空が晴れ、女子の15分前に行われた男子110メートル障害決勝で金井大旺(ミズノ)が13秒16(追い風1.7メートル)の日本記録を叩き出して優勝した。
「寒くて予選では体が本当に動かない感じだったので、決勝でもその印象が残っていた。やっぱり寒いなと思ったけど、金井君が日本記録で走ってかなり早かったので『えっ、走れるんだ!? 日本記録出るんだ』と思って切り替えられました」
実は「ママアスリート」と呼ばれることをあまり好んではいない。それでも、あえて自ら使っているのは、子どもを産んでも再び競技ができる環境をつくり、後輩たちの可能性を広げるため。次の照準は五輪参加標準記録の12秒84。会見では「ママかっこよかったって言ってほしいです」と娘に会うことを心待ちにした。五輪出場を掴みとり、夢舞台でもう一度、愛娘を喜ばせる。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)