かつての弱小サッカー部が掴んだ夢の全国 部員160人を支えた“女子マネ2人の献身”
南部九州総体(インターハイ)2019男子サッカー東京都代表として、初の全国大会出場を決めた、私立大成高校。チームを率いる豊島裕介監督が、サッカー部の指揮官に就任したのは約14年前。今大会は監督にとっても、まさに悲願の初出場だ。
インターハイで夢の全国初出場、大成を支えた荒井美紀さん、大久保柚さんの奮闘
南部九州総体(インターハイ)2019男子サッカー東京都代表として、初の全国大会出場を決めた、私立大成高校。チームを率いる豊島裕介監督が、サッカー部の指揮官に就任したのは約14年前。今大会は監督にとっても、まさに悲願の初出場だ。
「サッカー部に就任して1週間後、初めて迎えた試合が総体予選。隣の都立高校に0-5で負けたところからのスタートでした。地区の3部リーグに始まり、1年1年、階段を上って来た。全国から人を集めるでもなく、サッカーエリートでなくても、こうやって表舞台に立てる。部員がここまで増えたのも、そんな夢と希望を感じてくれたからだと思います」
かつての弱小サッカー部も、今や総勢160人を抱える大所帯。しかし、意外にも中学時代に全国大会を経験した選手はいない。
「所謂、エリート選手は1人もいません。今の3年生には1年生の時に『自分の足りない部分を知ってほしい』と、全国の強豪高校と、とにかく試合をさせました。それから2年間、苦しい時期もあったが、選手たちは必死に取り組んできた。
本大会出場が決まり、卒業した選手たちの顔も思い出されました。彼らが大成サッカー部の卒業生だと胸を張って言える日がきたことも、うれしいですね」
この大所帯のサッカー部を切り盛りしているのは、2人の女子マネージャー、新井美紀さん(3年)と大久保柚さん(2年)。
大成サッカー部は、2、3年生4カテゴリー、1年2カテゴリーの計6カテゴリーに分かれる。チームの管理を一切合切任されている2人は、役割分担をしながら時には練習、試合、遠征と別れる6カテゴリーをケアする。
「どちらかがグラウンドにいないといけないので、2人のスケジュールを組むのが大変」と話すのは新井さん。上級生の彼女がマネージャーの配置・役割を組み立てるが、どうしてもマネージャーが現場に行けない場合は、選手たちに仕事を引き継ぐ。
取材に訪れた日は、インターハイ前の全員合宿の真っ最中。それこそ早朝から消灯まで休む間もない様子だ。グラウンドでは、ドリンクやビブスを準備し、時にはスクイズボトルを詰めた15キロのケースを持って、グラウンドを走る。ケガ人が出れば応急処置をし、練習前後のテーピング、アイシングも彼女たちの仕事だ。
「合宿中は、部屋に戻ると秒速で寝ている」という2人。「夜、洗濯したことも覚えていません」と笑う。
子どもの頃から新体操をやっていた新井さんは、東京ディズニーランド(TDL)のダンサーになることを夢見た時期もあった。しかし、ケガが続いたため、選手としては中学生で退く。次に見つけた目標は「TDLで人と関われる仕事をすること」。将来の目標が、マネージャーになるきっかけになった。
「中学までは新体操一色。人のためにできることは何もなかったけれど、選手からサポートする側に回れば、人の気持ちを汲み取れるようになれるかなと考えました。しかも、マネージャーならば対応力も身につく。サッカーは好きだったので、やってみようかなと思ったんです」