貴景勝を生んだ埼玉栄相撲部 肥満にさせずに強くする、監督夫妻の“人情の食事学”
今年、関東大会、国民体育大会を制し、高校総体団体戦では3年ぶり10度目の優勝を果たした埼玉栄相撲部(埼玉)。高校総体、高校相撲選抜大会と2つの全国大会を合わせると、優勝回数は史上最多の19を数える強豪校だ。「他校との違いを強いて挙げるならば筋力トレーニングと食事」と話すのは、同部の山田道紀監督。九州場所で初優勝して一躍、時の人になった貴景勝、豪栄道ら多くの幕内力士を輩出してきた山田イズムとは――。
全国最強を築いた理由、多くの幕内力士を輩出した「筋トレと食事」の方法
今年、関東大会、国民体育大会を制し、高校総体団体戦では3年ぶり10度目の優勝を果たした埼玉栄相撲部(埼玉)。高校総体、高校相撲選抜大会と2つの全国大会を合わせると、優勝回数は史上最多の19を数える強豪校だ。「他校との違いを強いて挙げるならば筋力トレーニングと食事」と話すのは、同部の山田道紀監督。大相撲の九州場所で初優勝して一躍、時の人になった貴景勝、豪栄道ら多くの幕内力士を輩出してきた山田イズムとは――。
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「肥満で体を壊している選手は、通常、投薬をしながら、食事制限で減量して治す。うちは体を鍛え、大きくしながら、血糖値も下がっている。子どもたちの体作りを行う上で大事なのは、しっかりとしたトレーニングと食事です」
そう話すのは、山田監督。同校は今年の高校総体団体戦で3年ぶり10度目の優勝を果たした。全国高校相撲選抜大会と合わせると優勝回数は史上最多の19。これまで、九州場所で初優勝したばかりの貴景勝、豪栄道ら、数多くの幕内力士を輩出する強豪校だ。
同校はまた、練習時間が短いことでも知られている。
日々の練習は、1時間の朝練と、放課後1~2時間の稽古、そして夜のランニング。稽古では取り組みを行わず、四股、すり足、鉄砲などの基礎練習を中心に行う。
「20年ほど前から短い時間に集中して練習する形になりました。練習では相撲を取らないというと、皆に驚かれますが、大事なのはイメージというのが私の考え。長時間、ひたすら取り組みを続けてはケガをするだけなので試合の前に、5~6番組む程度です」
その代わり、週に3日はプロのトレーナーによる指導のもと、ウエイトトレーニングを行う。「筋力トレーニングの量は半端じゃなく多い。プロの力士以上、オリンピック選手クラスの高いレベルです」(山田監督)
山田監督は「他校とうちの違いを強いて言うならばトレーニングと食事」という。総勢23名(高校生19人、中学生4人)の部員は、山田監督夫妻とともに寮生活を送り、3食全て、山田監督と、妻・早苗さんが作っている。
同相撲部では2016年から3年間、慶大スポーツ医学研究センターの協力のもと、部員の体脂肪測定と食生活調査を実施。調査に乗り出した背景には、年々、大型化する高校生力士の健康問題があった。
「体は大きくしたい。しかし、子どもたちが130キロ、150キロまで病気にならずに体重を増やすのは非常に難しい」とは、この食事調査を行った公認スポーツ栄養士の橋本玲子氏。高校相撲競技者の多くは、10代にして高血糖、高脂血症など、常に肥満に伴う疾病の懸念がつきまとうという。なかには「小学6年生で体脂肪率が60%に達する者もいる」(山田監督)と非常に深刻だ。