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引退して気付いたテニス選手の真の価値 元プロが提案する新しい「コーチ」の形とは

選手を孤独にさせないピークパフォーマンスコーチの可能性

 引退後、少し離れた場所からテニス界を見ると、いい時も悪い時も自分と向き合いながらピラミッドの頂点を目指す、実にタフな世界だと感じた。相手と戦いながら、自分とも戦う。そこにテニスという競技の価値がある一方で、精神的に追い詰められる選手が後を絶たない課題も潜んでいることに気付いた。

「現役の間は自分たちがすごく難しいことに挑戦しているとは気付かないんですよね。A-MAPを始めてからテニスの競技特性について整理し直す中で思ったんです。『私、20何年も自分と向き合うことを止めないで、テニスをやってきたんだな。そこにこそ、私がやってきたことの本当の価値があるんじゃないかな』って。私は辞めてから気付いたので、現役選手にその良さを伝えていきたいと思いました」

 3月のピッチ大会予選に向け、ラーニングアドバイザーやメンターの助言を受けながら自分の想いを言語化したのが、「ピークパフォーマンスコーチの開拓」というテーマだ。ピークパフォーマンスコーチとは、選手が素直な想いや感情をアウトプットできる存在で、選手の心理的安全性を保ちながら、競技で最大限のパフォーマンスを発揮できるようサポートするコーチだ。スキル強化を担当するコーチとともに選手をサポートすることで、競技力だけではなく人間力も高い選手を育てることを目指す。

 予選では、自身が運営するテニススクールでの実践を念頭に、まずはジュニア選手を対象としたメソッドを組み立て、その後、トップ選手まで適用範囲を広げていくイメージを持っていた。だが、昨年12月に車いすテニス協会から依頼を受け、期待の新星・小田凱人選手の海外遠征に同行することになり、トップ選手に対するピークパフォーマンスコーチの在り方を模索する機会に恵まれた。そこで、ピッチ大会本戦では、第1段階としてトップ選手に活用できるスタイルを構築し、5年後にはアマチュア選手やジュニア選手などにも適用できる形を目指す計画に変更した。

 この発表を審査員は高く評価。トップ選手の孤独な戦いに寄り添うピークパフォーマンスコーチの存在は、弱音を吐けない経営者をはじめ一般社会にも汎用性があるという意見もあった。「そう言ってもらえたことで、テニスの価値を高めていただいた気がしています。経営者と同じくらい、テニス選手は頑張っているんだなって。テニス界でも一般社会でも本気で一流を目指す人に響くものになればいいと思います」と藤岡さんは笑顔を浮かべる。

 現役時代にピークパフォーマンスコーチがいたら良かったと思うか尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「欲しかったなって思います。あの時の自分を救ってあげたい。そういう想いで、今の自分はキャリアを積んでいるんだなって思うんです。何を目指しているのか考えた時、あの時にいたら良かったと思うような人を目指しているんだなって」

 あの時の自分を救いたい想いが、この先、大勢のアスリートや社会の人々を救う活動に繋がれば、まさに自分の経験を生かした最高の社会貢献と言えるのかもしれない。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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