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高卒プロではなく大学に進学した理由 五輪内定のクライミング森秋彩、「文武両道」で得る学びとは

8月に行われた世界選手権の女子リードでは日本人初優勝の快挙を達成した【写真:Getty Images】
8月に行われた世界選手権の女子リードでは日本人初優勝の快挙を達成した【写真:Getty Images】

勉強と競技の両立には「メリハリが大事」

「例えば」と、学んだことを挙げる。

「経済学で言ったらスポーツはスポーツ界だけじゃなく、地域の経済格差を改善したり日本全体を盛り上げる力を持っていることを知りました。

 倫理学だったら、例えば勝利至上主義の問題ですね。最近でも時々問題になる体罰の根っこの部分に関わっていると思います。私はもともと戦争と平和という社会問題に関心があったのですが、日本が第二次世界大戦に突入していった背景の一つは、勝利至上主義ともつながっているかもしれないと想像しました。このことは、今のスポーツ界にも通じるものが残っているかもしれないと思う場合があるし、そこを改善していく必要があると考えることもあります。そんなことから、戦争と平和の歴史的な部分にもスポーツがつながっているという自分なりの発見があったりしました」

 ただ、海外遠征や国内でも遠征の少なくない競技だけに、両立は簡単とは言えない。森はどのように両立しているのか。

「どちらも中途半端になっちゃうのが一番良くないと思います」

 そう前置きして、取り組み方をこう語る。

「だいたい朝の8時半から午後4時半くらいまでは授業が詰まっているので、その間はクライミングのことは考えず、勉強のことだけを考えています。家に帰ってきてからはクライミングのことだけを考える。メリハリ、オンオフが大事だと思っています」

 森は教職課程も選択している。

「3、4年生になると教育実習も始まります。そこで1、2か月登れない時期があったとしても、これまで積み重ねてきた努力の蓄積があるからいったんは落ちても、すぐ取り戻せると思うんですね。全然登っていないから自分はダメだと思う必要はなくて、登れなかった分、頑張って取り戻そうと常に向上心を持っておけば、必ず両立はできると思っています。その向上心というのは、勉強にも、スポーツにもつながりがあって、どちらでの取り組みも他のほうにつながっていくと思います」

 以前、両立を図るには優先順位をつけることが大事だという話を聞いたことがある。漠然と勉強とスポーツを両立させようとするのではなく、片方に注力すべき時はそこに全力を傾ける。その分、もう一方が遅れても、その集中力とエネルギーがあれば取り戻せる。いわば「時差」もつけつつ取り組むことが鍵を握る、と。

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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