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「1/2」で迷って決めた東海大 競泳金メダリスト金藤理絵の岐路になった「大学選択」

進路選択で大切な自分の軸「芯を持ちながら、周りの意見を聞く心を開いて」

「私自身は気づかなかったけど、先生のその一言で『私は東海大に行きたいと思っているんだ』と感じ、東海大に進学を決めたんです。自分一人で悩むだけでなく誰かに聞いてもらい、目や耳、他の感覚から入る情報がとても大切だなと思ったし、そこが大きな岐路になりました」

「自分以外から見た自分」で見えた自分の本当の気持ち。今、振り返ってみると、「東海大進学」の一番の決め手になったのは「ここで自分が強くなれると思ったから」という。

 2年先輩に日本代表を経験した田村菜々香がいた。中2で日本選手権100メートル平泳ぎ6位に入るなど注目され、高校時代は伸び悩みながら、東海大でもう一度、花開いた。自分も同じように大学で成長を……と、イメージを膨らませた。一方で「先輩(田村)が上手くいったからといって、お前も速くなると思うなよ」と忠告したのは、父だった。「実際にその環境で何をするかが大事」というのが、理由だった。

「自分の思いと父の意見、両方とも必要だったと思います。私自身は『東海大に行ったら強くなれる』という気持ちが強かったけど、そこでフワフワせずに周りがカマをかけるというか、浮かれすぎないようにストッパーになったと思います」

 悩んだ分だけ、覚悟は深まった。実際に始まった大学生活。高校まではクラブで練習に励んでおり、「部活」という枠組みに入るのは初めて。先輩のことも「くん付け」「ちゃん付け」で呼ぶフランクな関係から一変。1年生の仕事もあり、初めての一人暮らしも経験した。

「部活で覚えることもたくさんあって大変だったし、1人で寂しくて辛かったけど、仲間の存在だったり、充実した練習だったり、辛いと楽しいどちらかだけでなく、その両方があったから良かったと。入学2、3か月でもう『私は東海大に入って良かった』と思っていました」

 のちに二人三脚で金メダルまで歩むことになる加藤コーチに出会い、2年春の日本選手権200メートル平泳ぎで2位に入って08年北京五輪の出場権を獲得。翌年には日本記録を更新するなど、世界への足がかりとなる4年間になった。

 金藤さんがそうだったように、高校生にとって、大きな転機となる大学選択。情報化社会の今はより簡単に情報が手に入る分、情報過多になり、価値基準がブレることもある。だからこそ、大切になるのは自分の芯を持ちながらも“聞く耳”を持つということ。

 金藤さんも「私自身もアドバイスをもらえばもらうほど、よく分からなくなってパンクしたこともあります」と笑いながら、アドバイスを送る。

「自分の芯は持っていていい。ただ、周りのアドバイスを聞く時に否定から入るのでなく、自分とは異なる意見も受け入れようとする心構えが大切。最初から『自分はこうだ』と思い込んで話を聞いても、相手に失礼だし、時間も無駄になる。まずは受け入れる心を開いて、それでも『自分はやっぱりこう思う』と思えたら、それはそれでいい。芯を持ちながら、周りの意見を受け入れるために心を開くことが大切だと思います」

 次世代の高校生に伝えたい経験。そんな思いを共有する機会がこの夏にあった。8月に配信された「オンラインエール授業」だ。

「インハイ.tv」と全国高体連が「明日へのエールプロジェクト」の一環として展開。インターハイ中止により、目標を失った高校生をトップ選手らが激励し、「いまとこれから」を話し合おうという企画で、競泳の五輪金メダリストが“先生”になった。

 なかでも、印象的だったエピソードは東海大2年の時。1日30キロ、週150キロを泳ぐという過酷な追い込みをしたこと。1日10時間以上をプールで過ごし、「とにかく早く終われと思っていた」と笑いながら、その中で一本一本に自分の課題を意識することで練習の価値が変わったという。

「例えば、100メートル10本の練習を課されたとしても、10本を同じ目標でやるより『タイムにこだわる』『フォームにこだわる』『浮き上がりにこだわる』と1本ずつに意味を持たせれば、前向きになるし、一本一本が新鮮な気持ちでできる。ただ言われて10本こなすのか、自分で工夫して意味のある10本にするのか。その意識を持つことで、もっと強くなることができると思っていました」

 伝えたかったのは、何事も自分の意思を持ち、決断することで成長の度合いも、その後の人生も変わるということ。今回のインタビューを実施したのは、その授業後。金藤さんが競技人生において貫いてきた進路選択の軸について聞いても、哲学は一緒だった。

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