人はどこまで速く反応できるか 人知超越の0.001秒フライングでルール再考の必要性
法大・苅部俊二監督、金井は「0.1秒を超える人間かもしれない」
無風で100メートルを10秒00で走った場合、0.1秒で1メートルの差が生まれる。0.01秒なら10センチ。1回のまばたきをする平均時間が0.100から0.150とされているのだから、どれほどの世界で勝負をしているのか。
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失格を告げられた金井は、唖然とした表情を浮かべ、機械を確認していた。本人が自信を持っている以上、疑問が浮かぶ。人間の才能、技術が医学的根拠を上回ったのではないか――。時折、陸上界で議論される問題について、金井の母校・法大の苅部俊二監督は持論を明かした。
「その可能性はある。0.1秒以内で失格というルールの根拠が、平均を取っているのであれば、バラつきもある。それより速い選手も当然いるし、遅い選手もいるでしょう。そして、アスリートというのは速いから外れ値なわけですよ。何もないところからパッと動くのではなく、用意というものもある。反応時間より早く反応できるのではないかと思いますね。
技術も、人間も進歩してますから。0.1秒より早く反応できる技術とか、そういうものを持った人間もこれから出てくる可能性もある。彼(金井)はちゃんと音を聞いて出ていますし、山を張ったわけではない。もしかしたらその0.1秒を超える人間のなのかもしれない。閾値(いきち)を超えてしまった。速すぎたというやつですよね」
ルール上、失格は仕方のないこと。今回の結果には納得するしかない。では、金井はどのようなスタートスタイルなのか。大学での4年間を見守ってきた苅部監督は言う。
「スタートは元々速い。いつも0.1ギリギリでいける反応時間の速い選手。(スターティングブロックを)蹴るというより、体をポンっと前に出す感覚の選手ですね。手から離れていく感じで、狙ってできることではない。(反応時間の速さは)天性ですね。ちゃんと音を聞いて出るというのは、ほぼ天性のものだと思います。
指導したというよりも彼の元々持っているもの。あんな反応はできない。僕は400メートル障害だったので、のそっと出ますから。ああいうポンっという感覚は私にはわからない。それを体現できるというか、実践できるのはすごい選手ですね。反応時間は集中力や精神的なものもあるし、そこは教えてできるものじゃない」