日本ラグビーが世界に及ぼした甚大な衝撃 12年前と境遇が酷似、夏のV字回復&赤竜狩りへ「奇襲攻撃をかける」――エディーHC単独インタビュー

ウェールズ戦に2つのキー「ブレークダウンの闘い」「スーパーフィジカルに」
ガットランドは2007年から19年まで長きに渡りウェールズ代表HCを務め、チーム強化を進めてきた。息子のブリンが日本のコベルコ神戸スティーラーズで司令塔として活躍している。HC復帰後の今年2月に12連敗を喫して、過去ワーストの世界ランク12位に後退した時点で事実上の解任という屈辱を味わったが、そんな名将も23年以降の低迷からチームを浮上させられなかったことがウェールズの深刻さを物語ってもいる。同じく昨季はテストマッチ4勝7敗と期待には応えられなかった“第2次”エディージャパンにとって、相手の17連敗、そして日本の過酷な暑さと湿気という追い風が吹く中での勝負になるが、そう安易なストーリーばかりが待ち受けているわけではない。
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エディーが指摘したようにまだ再浮上への可能性を模索中という対戦相手にとって、「超速」を信条に掲げる日本との不利な条件下でのゲームとなれば、やるべき戦い方は明白だ。最も自分たちが優位に立てると考えられる接点でのフィジカルコンテストで圧迫して、ジャパンのスピードを封じ込もうと考えるはずだ。しかも、日本代表という対戦相手は、ウェールズ代表がテストを組むレベルの対戦相手の中でランキングで最下層グループ、つまりマストウィンの相手でもある。連敗続きという苦悩の一方で、不名誉な記録を止める千載一遇のチャンスとも考えているのは間違いない。
そんな両チームにとって勝利が重要な意味を持つゲーム。日本代表は何を強みにして戦うのか。
「2つのキーがあると考えています。一つはブレークダウンの闘いで勝つことです。ここからクイックに球出しが出来れば、アタックのところが生きてくる。そしてディフェンス面では、スーパーフィジカルに戦っていく。これまでジャパンはそこを出来ていなかった。なので短期間での変革をもたらそうとしています。ウェールズ戦は、そこが一番のチャレンジになる試合です」
確かに昨季の日本代表は、その若さも響いて接点では優位性を持つことは出来なかった。1対1のフィジカルで苦戦を強いられ、2人目、3人目のサポート、集散も相手を凌駕するスピードに欠けていた。果たしてエディーが唱えたように、その課題が翌シーズンで直ぐに大幅に改善させられるのかと聞くと、指揮官がこう言葉を続けた。
「今季取り組んできたU23日本代表、そしてJXVで、そこはこだわって取り組んできました。その結果、ブレークダウンのクオリティーはかなり良くなっています。ジャパンでも同じようなクオリティーにしていきたい。日本では従来、ブレークダウンスキルがあまりスキルとして捉えられてこなかった。例えばニュージーランド(NZ)を見てください。7番(オープンサイドFL)のブレークダウンスキルが凄い選手が優秀だと見られてきた。なので、日本でもそこの意識を変えようと思っています」
エディーが指摘するNZは長く“7番の宝庫”と呼ばれてきた。名を挙げれば圧倒的な強さを見せた第1回W杯で不動のメンバーとして活躍したマイケル・ジョーンズ、2011、15年W杯優勝キャプテンのリッチー・マコウ、日本でプレーしている選手でも埼玉パナソニックワイルドナイツのラクラン・ボーシェーや横浜キヤノンイーグルスのビリー・ハーモンと錚々たる顔ぶれが挙げられる。オープンサイドFLは、攻守でスクラムから真っ先に飛び出し、ファーストコンタクトのタックルで相手ボールを殺し、ボールキャリアーへの素早いサポートでボールをリサイクルするリンクプレーヤーが仕事だ。日本にも昨季で引退した島田直也(横浜キヤノンイーグルス)、クボタスピアーズ船橋・東京ベイの末永健雄のような職人技を発揮する選手もいるが、代表での起用となると常に世界とのサイズの闘いを強いられるポジションでもある。日本代表が躍進した2019年W杯ではピーター・ラブスカフニ(S東京ベイ)が「7番」としてチームの躍進を支えたが、この先誰がその座を継いでいくかも注目ポイントになる。
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