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日本ラグビーが世界に及ぼした甚大な衝撃 12年前と境遇が酷似、夏のV字回復&赤竜狩りへ「奇襲攻撃をかける」――エディーHC単独インタビュー

単独インタビューで熱弁を振るうエディーHC【写真:吉田宏】
単独インタビューで熱弁を振るうエディーHC【写真:吉田宏】

W杯オーストラリア大会に向けても勝負を仕掛ける好機に

 歴史的な経緯と同時に、2年後を睨んだ戦略面でも、ウェールズ戦には重要な意味がある。2027年W杯オーストラリア大会は、今年末に組み合せ抽選会が予定されている。この組み合わせで重要なのが、各国の世界ランキングだ。その順位に応じて、バンドと言われる実力毎のグループ帯が設けられ、同じバンドの国が各組(プール)に振り分けられることでプール間の実力の偏りを減らす措置が今回も導入される方向だ。

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 もし日本がランキングを下げれば、同じプールに上位ランキングのチームがより多く振り分けられる可能性があるし、日本がランクを上げれば、逆に下位チームとの試合が増えることになる。本大会で日本が目標に掲げるベスト8、ベスト4と上位に食い込んでいくには、組み合わせでも優位性を保ちたいのは明らかだ。

 6月26日現在の世界ランキングを見ると、日本の13位に対してウェールズは12位とマッチレース状態にある。そして、抽選会目前の秋のツアーでは再びウェールズと相まみえ、さらに同11位のジョージアとの1試合も組まれている。トップ10内の強豪との対戦が渡欧前のランク2位のニュージーランドと、ダブリンでの同3位アイルランドのみという対戦スケジュールも何やら戦略的な臭いもしてくるが、苦戦が続く日本が抽選会に直接影響し兼ねない近いランキングの相手と“抽選会イヤー”に都合4試合を組んでいるのは興味深い。負けた時のリスクもあるが、ここが日本代表として27年の本番も踏まえて勝負を仕掛ける好機と考えているはずだ。

 ウェールズも、13年同様にライオンズ遠征との同時進行の中での来日になる。12年前と大きく異なるのは、ライオンズに招聘された選手が今回はわずか2人だということだ。エディーも「2人しか選ばれていないことがウェールズの現状を物語っている」と指摘するが、チームは2023年W杯以降17連敗と歴代でも類を見ない程の低空飛行のまま日本にやって来る。そんな苦悩するレッドドラゴンの状態を、エディーはこう分析している。

「23年のW杯で選手の平均年齢が最も高かったのがウェールズ。そして日本が2番目だった。そこまで高齢の代表チームになると、やはり選手が引退していく中で大きな変化が必要になるのです。テストマッチラグビーというのは、コンテストの質の高さや経験値が、全てではないけれどかなり重要です。ウェールズは23年大会がベスト8ですよね。そこから17連敗してしまったのは、やはり経験者がいなくなり若いチームで、容赦のない6か国対抗のような世界トップクラスの大会を戦っていることで、このような結果になっているのです」

 23年W杯へ経験豊富な選手で固めて挑みながら、結果的にウェールズはベスト8、日本は前回大会の8強へあと一歩及ばずプール戦敗退と、共に期待された結果には辿り着けなかった。大会までに選手層という“貯金”を使い果たしてしまったために、その後は急速に世代交代に舵を切り、結果を出せないまま2025年のサマーテストシリーズを迎えようとしているのも似通った境遇だ。そんな似たもの同士の相手を、指揮官はどのように見て、どんなゲームを構想しているのだろうか。

「(ウォーレン)ガットランドHC時代は、伝統的なコンバット系のラグビーをやってきていた。だが、新しい体制になった今年の6か国対抗では、結構オープンな展開をみせて、ちょっと戦い方を変えてきている。でも、日本相手には再びコンバットゲーム仕掛けてくると思いますね。トレンチ・ウォーフェア(trench warfare:塹壕戦=硬直した戦況の意味)となるので、我々としては奇襲攻撃をかけていきたい。その中でフィジカルで80分間互角に戦うことが出来れば、崩すチャンスが出てくる。つまり勝機が見えてくるのです」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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