野球ファンの半分は女子なのに「見ることしかできないと思っている」

「中学生になると、雰囲気で『野球を続けていてもいいのかな？』と思うしかなかった。大好きでやっているのに、先の道がなかったんです。困って泣いてしまったこともあります」

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　当時の韓国では、女子の少年野球への参加資格は中学1年で終わっていた。その先も女子が野球を続ける道はなかったが、キム・ラギョンはあきらめなかった。声を上げると周囲の助けもあり、女子は中学3年まで男子の少年野球に参加できるというルールが生まれた。通称を“キム・ラギョン法”という。さらに日本の東大に例えられる、最難関のソウル大学へ入学。ここでも男子の野球部に入れるようルールが変わり、男子リーグでも投げた先駆者だ。

　それでも、道はまだ足りない。日本では、NPB球団が傘下に女子チームを抱える例が巨人、阪神、そして西武とある。韓国にはまだ一つもない事例だ。韓国プロ野球は昨季、初の1000万人動員を成し遂げるなど、活況の中にある。その熱を女子野球にも向けてほしいと願っている。

「野球ファンの半分は女子だと思います。でも女子は見ることしかできないとみんな思っているんですね。球場で、女子にも野球ができるという雰囲気を作ってほしいなと思います。それだけでも、仲間は増えると思うんです」

　日本でも信頼される選手になることで、球界まで変えたいとの思いは強い。キム・ラギョンは流ちょうな日本語で繰り返す。「私は、道を作る選手になりたいんです」。日本で知ったたくさんの道を、いつか韓国にも生み出す。