「他のスポーツは日本国籍を持てば平等なのに…」 ラグビー界で賛否、導入される“日本人選手優遇”新規約の問題点を検証
外国人選手の本音「他の日本のスポーツなら日本国籍を持てば平等なのに…」
今回の追加カテゴリ制が発表されてから、ある海外出身の日本代表経験者にどう受け止めているかを聞いてみた。現在は代表に選出されていないこの選手は、過去のワールドカップでも日本代表の躍進に貢献し、既に日本国籍も取得している。ラグビーファンなら誰もが日本代表への貢献を認めるであろう一方で、30キャップには達していないため、2シーズン後からは現在のカテゴリAでの出場権限を失い、A-2の選手としてリーグ戦出場、メンバー登録に制約がかかることになる。
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「(A-2カテゴリの選手には)日本のリーグを支えてくれたような選手が沢山いる中で、この判断に至ったのは正直悲しい部分もあるし、日本が(世界のラグビー界の中で)今の立場に来られたのも、(海外出身の)選手の力があったからだと思う。正直難しい決断かなと思います」
複数のメディアの前では、通訳を通じて英語でこう話したが、その後2人だけで話をすると、流暢な日本語でこう訴えた。
「リーグワンでは、国籍を(日本に)変えても、代表でも30キャップ以下なら、4年プレーしてきたのと同じ評価だけなの? でも、僕もそうだが、30キャップになっていない選手も沢山いる。代表で頑張って来た選手へのリスペクトがないです。皆ハードな合宿、ハ―ドな代表の試合で頑張って、日本代表を世界7位(当時マークした同代表最高順位)にさせたのに。他の日本のスポーツなら日本国籍を持てば平等なのに、ラグビーだけ違う。それはちょっとね」
昨シーズンに日本代表入りを果たした海外出身の選手にも聞いてみたが「残念な気持ちはある。僕も留学生で日本に来て、カテゴリAでゲームに出られたが、これから制約があるために試合数が減るかもしれない」と憤りというよりも不安を口にしていた。
リーグ側では、追加カテゴリの導入については、代表者会議の「総意」として、選手会とも意見交換をしたというが、紹介した日本代表経験者のような30キャップに届かないまま現役を続ける選手や、昨季代表デビューを遂げた若手、そして日本国籍を取得した海外出身選手らへのヒアリング等は行っていないと聞く。例え対象となるのは数人から十数人という一握りの選手に過ぎなくても、先の代表経験者が語った思いや、彼が口にした「リスペクト」という言葉からは、もう少し彼らへの配慮を盛り込んだ規約を設けてもいいのではないかという懸念も浮かび上がる。
このような選手たちが日本のために尽くしてくれた貢献を尊重し、出場枠の不安なく日本でプレー出来るために、彼らを対象にした特別ルールや、さらに柔軟性を持った枠組みが作れなかったのだろうか。基本的には、規約というのは特例を設けることを極力避けて、よりシンプルで一貫性を持たせるべきだとは思うが、30キャップに届かない元代表選手、日本国籍取得者ら海外出身の選手に対する特例が導入されたとしても、今回の追加カテゴリの適用において多くの選手、チームに不利益を及ぼす可能性はないだろう。
追加して、もう一点懸念を感じていることに触れておきたい。日本国籍を取得した海外出身者でカテゴリA-2に分類される選手に対する法的な問題だ。職業(選択)の自由という憲法上国民が保証された権利を、A-2の規定が侵害するのではないか。この懸念に、東海林専務理事は「法的なチェックはしているが、基本的な考え方としては代表エリジビリティ―(居住、選手登録)規定に則ってやっていることと、A-2での試合出場機会を奪っているものでも全くない。出場機会は一定数得られているので法的な問題は一切生じていないと確認、認識している」と説明している。現実的には選手が法廷闘争に持ち込む可能性は低いだろうが、A-2に分類されることで選手のプレー機会が減少し、試合給などに直接影響が及んだり、雇用契約に影響するような事態になれば、選手はもちろん、リーグにとっても歓迎出来ない状況になる。
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