[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

10代で入った陸上女子代表「雰囲気が悪かった」 敵選手を助ける理由になった寺田明日香の初合宿

未来への還元に意欲を見せた寺田【写真:南しずか】
未来への還元に意欲を見せた寺田【写真:南しずか】

次世代と本気で走るキャリア最終盤「私のわがまま、矜持」

 22年2月、現役の傍ら陸上教室や食育を通じて次世代育成に取り組むイベント会社「A-START」を設立。今秋以降は「Baton Run Tour」と題し、全国各地の大会に出場する。「私の夢。もっと全国の陸上大会を周りたい。一緒に走ることでバトンを繋ぎ、次世代が夢に挑戦する原動力になれば」。来年の冬季練習もこれまでと同様に追い込む予定。小学生向けのかけっこ教室も実施する。

【注目】日本最速ランナーが持つ「食」の意識 知識を得たからわかる、脂分摂取は「ストレスにならない」――陸上中長距離・田中希実選手(W-ANS ACADEMYへ)

 トップアスリートの体でいられる残り短い期間を未来に還元したい。「私のわがままであり、矜持でもあります」。真っ赤に腫らした目は、意欲に満ちていた。

「いつも通りシーズンを過ごす中、もっと子どもたちとレースをしたいと思うことが多く、地方にもいきたいと思うようになりました。代表を目指す路線にいると、並行してやるのは難しい。今は体が動かないわけじゃない。トップ選手だから伝えられることがあります。一緒に走ることで『トップ選手はこんな技術があって差がつくのか』『いや、意外と差がないな』と思ってもらいたい」

 これも自身の経験から。高校時代に代表選手と戦い「これくらいの距離感で負けるんだ。意外と近いな」と世界陸上、五輪が現実味を帯びた。「上を目指したいと思うようになった。きっかけをいただいたので、今度はきっかけを与える側に」。世界陸上を終えた直後だから、一流アスリートのレベルを見せつけられる。

サプライズで清宮幸太郎と父・克幸氏からプレゼントを贈られた寺田【写真:南しずか】
サプライズで清宮幸太郎と父・克幸氏からプレゼントを贈られた寺田【写真:南しずか】

 北海道出身。憧れる日本 ハムの新庄剛志監督のような引き際を描き、シーズン本格開幕前に表明した。

「新庄戦法です。シーズン前に辞めると言って、みんなが見に行った。私もそうありたい。最近、陸上界は盛り上がっているけど、地方に行くとそうじゃない。ちょっとでも恩返しをして辞めたい」

 世界陸上代表入りへ、今月29日の織田記念国際、6月の布勢スプリント、8月の富士北麓を走る。コンディションもいい。目先の大舞台は7月の日本選手権。

「勝ちに行きたい。勝ち逃げしたい」

 最近になって果緒さんが陸上を始めた。胸に刺さった「やりたい」の言葉。

「やってきてよかったなと思った。つらいこともあるけど、楽しそうだと思ってもらえたのは、私の一つの陸上人生の成功だと思う」

 泣きまくった会見終盤。崩れたメイクを直すため、スタッフも登壇した。「こんな公開メイクある!? 良いけど!」。ドッと笑いに包まれた。涙あり、笑いあり。現役最後の瞬間まで、らしさ満点で跳び越えていく。

■寺田明日香 / Asuka Terada

 1990年1月14日生まれ、北海道出身。小4から競技を始め、北海道・恵庭北高では100メートル障害で全国高校総体3連覇。08年から日本選手権3連覇し、13年に怪我や摂食障害などで現役を一度引退。14年に早大人間科学部に進学し、同年に結婚・出産を経て、16年夏に7人制ラグビ ーに挑戦した。17年1月から日本代表練習生として活動。18年12月に陸上界復帰を表明。19年は日本選手権3位、9月に12秒97の日本新を樹立。21年に自身の日本記録を2度更新。同年日本選手権で大会史上最長ブランクの11年ぶり優勝を果たした。同年東京五輪は日本人21年ぶりの準決勝進出。23年ブダペストなど世界陸上は3度出場。自己ベストは23年5月の12秒86(日本歴代3位タイ)。家族は夫・峻一さん、長女・果緒さん。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

1 2
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
CW-X CW-X
lawsonticket
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集