続出する中断、1節計18度も…ラグビーも採用した「ビデオ判定」の検証、依存傾向の裏にレフェリーの課題
WRの「危険のスポーツ」のイメージを減らす強い姿勢も影響
TMOについては2023年6月の本コラムでも検証しているが、基本的な問題点は変わらない。導入の是非については、プロ化が進むトップレベルのリーグでは、ジャッジの公正さ、正確性を確保し、選手生命に影響し兼ねない危険なプレーの取り締まり、抑制などの観点からは受け入れられている。ラグビー自体が、ボールゲームの中でも多い敵味方30人の選手がピッチで入り乱れ、プロ化が進むのに伴い、より組織的にプレーし、選手個々の役割が細かく決められていく戦術性の進化の中で、従来の3人のレフェリーだけで全ての選手、プレーを詳細に見切れなくなっなっている実情も、TMOの重要性を高めている。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
このような状況の中で改めて検証するべきは、TMO自体の是非論ではなく、刻々と進むゲームの中で、どこまでこのテクノロジーを介入させるかだろう。TMOが主にどのような状況、理由で使われるのかは下記のような項目が挙げられる。
(1)トライシーンの確認
(2)選手同士によるコンタクト等の危険度のチェック
(3)スローフォワード等のミスや反則などの認定
(2)の安全面に関しては、統括団体ワールドラグビー(WR)が、この競技から「危険なスポーツ」というイメージを減らしたいという強い姿勢が、ルール、レフェリング面にも反映されて、TMOによる厳正なチェックの必要性を後押ししている。
冒頭に挙げたホニス氏の「平均」という見解は、リーグから提示された下記のデータを踏まえている。
【主な大会での過去2シーズンのTMO回数(1試合平均)】
22/23年 23/24年
リーグワン 2.0 1.7
スーパーラグビー 1.5 1.4
フランスTOP14 不明 1.6
(リーグワン、日本ラグビー協会レフェリーグループによるデータ)
これまでの統計上は確かにリーグワンが傑出して多くはないとも見られるが、この提示された数値では判断するにはあまりに乏しい。手元の集計では、先に紹介した3月1日の数値に翌2日の3試合も含めた10節全ゲームの合計で18回、1試合平均3回のTMOが起きている。つまり、27分毎にゲームがTMOで中断されたことになる。10節までの今季全試合でのTMOは1試合平均2.32回になっている。昨季をみると、レギュラーシーズン(16節)で通算165回TMOが行われていた。これは1試合平均では1.72回、47分に1回という数値だ。この数字と比べると、今季の増加傾向は明らかだ。