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仕事を失った絶望期「本人の話を聞いた」 対戦相手・比嘉大吾に支えられた堤聖也の闘争心

比嘉戦で入場を終え、覚悟の決まった表情を浮かべた堤【写真:中戸川知世】
比嘉戦で入場を終え、覚悟の決まった表情を浮かべた堤【写真:中戸川知世】

映画「ロッキー」に抱いた感情「アイツにピッタリじゃん」

 過酷なトレーニングで追い込んだ。スパーリングは100回以上。「ベルトを守ろうだとか、迎え撃とうだとか、そういう感覚で臨んだら間違いなくやられる」。流した汗の分だけ心も研ぎ澄まされていった。リング上で「執念」を持つために大事な期間だった。

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「実際にきつい局面に立った時に生まれる自分の心との勝負。拓真戦では凄く準備してつくったけど、一度できたものをもう一度そのまま同じようにつくれるのか。それは難しい。またハードなトレーニングをしてつくっていく。つくれていると思っても、実際にはできていないこともある。究極の状態まで自分を持っていって、極限のトレーニングや準備の中で心がつくられていく」

 比嘉がボクシング映画「ロッキー」の第1、2作でモチベーションを高めているという記事を見た。負けじと6作目のファイナルまで制覇。世界王座から転落した主人公が人生を懸けて再起する。「アイツにピッタリじゃん。ファイナルまで見ていたら、めちゃくちゃプラスに働いてしまう。やべぇな」。画面の前でそう思いながらも、ニヤリと笑った。強い相手に勝つから価値がある。

 世界王者の夢を叶えて4か月。気持ちを切らさず追い込めたのは、実は過去に聞いた比嘉の話のおかげでもあった。

 2018年4月、比嘉はWBC世界フライ級王座3度目の防衛戦で体重超過を犯した。当時、世界戦では日本人初の失態。王座を剥奪され、日本ボクシングコミッション(JBC)から無期限の資格停止処分を受けた。

 仕事もなく、やることがなかった絶望期。堤は今、当時を思い出す。「どん底に行ったところも見ているし、その時の本人の話も聞いた。僕もいざ世界王者になってもあまり調子に乗らず、割と変わらないままいられている」。ベルト1本持つだけで180度変わった周囲の視線。自制しながらハングリー精神を大事にした。

「アイツの立ち位置もわかっているし、しっかり敬意を持って終わらせる」。ライバルに向ける言葉は鋭い。ともに29歳。負ければ次のチャンスは来ないかもしれない。試合に向けた会見。2人は同じ言葉に決意を込めた。

「勝つ以外に道はない」

 リングは炎に包まれる。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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