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日本に2度目のラグビーW杯はやってくるのか 2035年に照準も…大会は巨額ビジネス化、WRとの“綱引き”に

ロビンソン会長が語った期待「日本には大きなチャンスがある」

 背景にあるのは、日本の国際大会開催実績だ。2019年のW杯こそ世界にインパクトを残したが、それ以外では2009年のU20チャンピオンシップ程度と、日本開催の国際イベントは驚く程少ない。7人制のワールドシリーズ(現HSBC SVNS)は2015年を最後に行われていない。日本が23年5月に、協会運営力、収益性などの評価で「ハイパフォーマンスユニオン」と呼ばれる世界最上位の協会の一員に認定されたことを考えれば、WRからの“注文”が従来以上に高まっても不思議ではないだろう。そんな思いを反映するように、わずか1時間あまりのブリーフィングと質疑応答でWR首脳から矢継ぎ早に女子、7人制への期待感が発せられている。

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 当然ならが、JRFUもWRからの“メッセージ”は理解しているはずだ。これからの話し合いの中で、どこまでWRが期待するものに応えることが出来るかが、2度目のW杯実現への潤滑油になるのは間違いない。それが7人制ワールドシリーズやW杯なのか、U20の国際大会なのかは、双方のニーズや開催日時、運営資金などの諸条件の中で、ベストなシナリオを双方が擦り合わせる交渉になる。JRFUの予算も踏まえれば、WRからの要望全てに“いい顔”は出来ないのは間違いない。どのようなニーズに応えることが、W杯再招致のためによりいいポイントを稼げるのかを慎重に精査しながらの駆け引きが続くことになりそうだ。

 ブリーフィングでロビンソン会長は、ピッチ上での日本への期待も語っている。

「日本は男女代表共にパフォーマンスが高い。今年の女子W杯、27年の男子大会で、しっかりと活躍することが期待されるし、そのためには(男子は)26年から始まるワールドラグビー・ネイションズチャンピオンシップ(WNC)にティア1(最上位国)として参加することが極めて大切になる。W杯の間にも大きな大会があるということ、そして日本が毎年のように激しい競争を潜り抜けること、これが将来の日本のラグビーも発展にもなるし、今後のW杯の成功にも繋がると考えている。日本には大きなチャンスがある」

 日本へのエールでもある一方で、これから本格化する2度目のW杯招致レースへ向けて、日本代表の活躍、成績は重要だというメッセージと受け止めていいだろう。WNCは、この10年以上に渡り開催が浮上しては消えていた大会だ。世界の上位12か国が隔年で戦う“ミニW杯”は、23年のW杯フランス大会期間中に正式に開催が発表されたが、欧州6か国対抗と南半球のラグビーチャンピオンシップに参加する10カ国の出場が確定し、残る2枠は日本とフィジーが有力視されている。

 ロビンソン会長は「(WNCは)いろいろな国が価値のある戦いをして、ファンも増やしていけるチャンスになる。現在は、6か国、チャンピオンシップ参加国、そして日本とフィジーという国の対戦がどのようなものになるのが一番いいのかといった交渉が行われている。私たちWRもその交渉を助ける形になっているが、日本がこの中で果たす役割は極めて大きいと考えています」と、既に日本代表の参戦は既成事実のように語っているが、この新たな強豪国同士のトーナメントで結果を出すことが、W杯招致にも影響することは心しておく必要がある。

 新会長が“顔合わせ”の訪日で出してきたパンチは明らかだ。2度目の開催権を手にするためには、2019年以上の参加国、開催期間と規模を広げるであろう大会の、前回以上の収益性も含めた成功の担保と日本代表の躍進が絶対条件であり、その前提としての国際大会への門戸開放をどう実現していくのか。しかし、忘れてはいけないのは、WRが何を求めるのではなく、日本がどんな2度目の祭典を開催したいのかだろう。国内外へ向けて、前回掲げた「アジア初」「伝統国以外での開催」に代わる新たな意義と価値をどう訴えていけるのか。10年後なのか、それとも14年後かはこれからの綱引き次第だが、敗れた2011年も含めた3度目の招致レースは既に号砲が鳴らされている。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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