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「ラグビーが野球に並ぶくらい有名に」 最強野武士軍団、エディージャパン…日本ラグビーの“これから”に託す思い

日本代表は「全てを賭けていいような場所やと思います」

「先ずは良かったこと、悪かったことの見極めが大切だと思います。負けたからと言って全部悪かったわけじゃないし、だからと言って意地になって、良かったから何も変えへんというのも絶対良くないと思う。何かマイナーチェンジをかけながら、ちょっと選手のやる気が出るようなアタックやディフェンスのプランとかを考えなアカンなと思います。後は、やっぱりラグビーというのは判断のスポーツだと思うので、1秒1秒全てのプレーに判断が関わってくる。アタックに関して言えば、もっともっと判断を入れていけるような練習を意識して、いくら外れたと言っても自分の判断で、自分の前が開いたら自分で勝負を仕掛ける方がいいですし、そういう判断が出来るプレーを心がけてほしいなと思いますね」

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 堀江の言葉からは、チームの課題だけではなく、ラグビーという競技で何を大事にしてきたかが読み取れる。それは、ラグビーの持つ「自由さ」であり、その自由さのために必要な「判断力」だ。それが、ラグビー自体が持つ魅力でもある。そして、栄光のジャージーを脱いだいま、残された後輩たちにこんな思いを抱いている。それはジャージーを脱ぐレジェンドから選手へのメッセージだ。

「ホンマに、いま言ったことです。自分たちで動かないと強くならない。これを、ずっと続けてほしいですね。 もちろん1個のプレーの判断の良し悪しというのはありますけれども、大まかなところは、自分たちでこのチームを良くしていこう、動かしていこうという思いがないとね。後は戦術戦略を口開けて待っているだけじゃ絶対強くならないと思う。スタッフも選手が食いついていけるような面白い戦術は何かと考えていって欲しいと思います。それが結構難しいんですけどね」

 必要なものを選手が自分たちで見極め、自発的に動いて手に入れること。そこをコーチ、スタッフが上手くサポートしていくような環境が、強いチームには不可欠なのだ。

 では、埼玉WK同様に長くプレーしてきた日本代表というチームは、堀江にとってどんな存在だったのだろうか。

「嫌でもW杯でラグビー人生が変わりましたから。なので、全てを賭けていいような場所やと思います。それでW杯で花が咲けば、がらっとスポーツ人生、自分たちの人生が変わる。そんな場所ですよね」

 人生が変わった瞬間が、前編でも触れた堀江にとっては「特別」と語る2015年大会だった。大会へ向けた準備の段階を取材して感じていたのは、日本開催が決まった19年大会を見据えて、イングランドでは世界にインパクトを残さなければいけないとういう選手たちの決意、そして危機感に近い使命感だった。そんな中で掴んだ歴史的な勝利が、自分たちの想像を超えた熱量で日本にまで発信されたことが、4年後の歴史的な躍進の源流になったのは間違いない。

 その一方で、さらにジャンプアップを期待された23年大会は、プール戦敗退という結果に終わっている。大会前にすでに代表引退を表明していた堀江も“花道”を飾れなかったが、そこには日本が新たなステージに足を踏み入れたという実感もあった。

「やっぱり、周りが本気で日本のことを見始めたという感じはしました。15年や19年は、対戦相手も日本に対して『まぁまぁ大丈夫だろう』みたいな感覚でいたのが、19年にベスト8という結果を残した後の23年だったので、絶対に手を抜いたらやばいと思われていたと思います」

 2015年の金星があっても、世界の強豪国はフロックという意識をどこかで持っていた。19年大会は、例えてこずっても勝てるだろうという日本軽視の気持ちが、対戦相手の心の片隅のどこかにあったと堀江は感じていた。だが、23年大会へ向けては、各国の日本代表を警戒する度合いが大きく変わっていた。堀江は「本気で分析してきた」と語っているが、プール戦で日本が敗れたイングランド、アルゼンチンは共に徹底して日本を分析して、その強み、弱みを知り尽くした上で挑んできた。世界ベスト8クラスのチームが、ようやく日本と“本気”で戦う時代を迎えていると考えていいだろう。

「だから23年大会で、僕は逆にサモアに勝てたのが、ちょっと『おぉ』と感じたんです。やっぱ自力付いてんねんやと。結構しっかり見られているなという感じの中で、普通にサモアに勝ったのが印象的でしたね。それと、プール戦敗退やったけど、自分たちのラグビーを表現したからこそ、結果が出なくても日本に帰ってきた時にすごくウェルカム感というか、『頑張った』と受け止めてもらえたことが一つの救いかなと思います」

 堀江の引退と同じタイミングで、日本代表はエディー・ジョーンズHCが復帰して新たな体制で2027年のW杯への挑戦をスタートした。堀江自身も15年まで薫陶を受けてきた指揮官の帰還への期待感は大きい。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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