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エディージャパン3戦目で刻んだ歴史 金星の理由、殊勲の男は「タマ」…見え始めた「超速ラグビー」の実像

司令塔のキック、パスの回数から興味深い傾向

 代表合宿では練習生からイングランド戦での先発テストデビューを掴み獲り、この試合まで3戦連続で15番を背負い続ける。マオリとの2試合は合計160分間フル出場した20歳は、この試合では途中退場したSO山沢拓也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)に代わりプレースキッカーも任され、2回のコンバージョンのうち最初のゴールを成功させるなど、エディーの期待感は試合を重ねる毎に“先行投資物件”から、リターンを得られる素材へと高まっている。

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 ゲームの組み立て方にも、勝つための顕著な修正が見ることが出来た。2試合連続で司令塔を担ったSO山沢のキック、パスの回数から興味深い傾向が読み取れる。第1戦のキックとパスの回数は12-16だったが、第2戦では20-14とキックが激増している。取り組み始めたばかりの「超速ラグビー」だが、ボールをキックなどで手放さず、保持しながら展開するイメージが強い。しかし、この第2戦で、山沢は、陣地を稼ぐなど状況に応じて積極的にキックを選択してゲームを進めていたのだ。

「先週の試合からキックでのチャンスが色々あるということがわかっていた。なのでキックでも プレッシャーをかけていくというところをチームとして意識していました。上手くいかないところもありましたが、しっかりいいチェイス(キックの追走)が出来たので、相手にプレッシャーをかけられたと思います」

 闇雲に超速を意識した戦術を多用した前戦までとは打って変わり、この試合では戦況に応じてキックとランプレーを使い分けていたのが勝因の1つになっている。チーム全体のデータを見ても、1回のキックに対して何回パスをしているかを示すキック・パスレートは第1戦の1:7.4(総キック回数19)から1:3.9(同36)へとパスが減りキックが増えている。この2試合のマオリのキック回数の37、33回という数値を見ても、その変貌ぶりが判る。

 このようなデータは、超速からオーソドックスなラグビーへの“後退”とも解釈出来るが、むしろイングランド戦からの2試合での暴走しすぎた超速の軌道修正がされたと解釈していいだろう。エディーが就任当初から説明するように、「超速」はあくまでもコンセプト=概念だ。80分間のプレー全てが映像の早送りのようなイメージは適切ではないのだが、実際にコーチングを受けてきた選手の中にも、最初の2試合では心理的な「慌て」があったのも事実だろう。

 そのような状況から、マオリ第2戦でしっかりとゲームを勝つ方向へコントロール出来たという点では、チーム全体のプランの理解力、山沢のゲームメーカーとしての1週間での成長が評価できる勝利だった。エディーが第2戦前の取材で、「いま10番のオプションには李(承信、神戸S)、山沢(拓也)、松田(力也、トヨタヴェルブリッツ)、立川(理道、S東京ベイ)と4枚まで層を厚く出来ている」と自賛していたが、7月7日に発表されたジョージア戦(同13日、仙台)へ向けた宮崎合宿メンバーも、この4人が揃い踏み。昨秋のW杯までの代表実績を持つ松田、李に、多彩な個人技が魅力の山沢、そして高い経験値を生かした試合を終わらせるフィニッシャー、先発SO、CTBとユーティリティーの高い立川と、10番争いが本格化しそうな様相だ。

その一方で、キックを多用した戦い方には、状況に応じた対応力という勝つために欠かせない要素も反映されていた。勝者会見でエディーは、こう説明している。

「今夜のような(高温多湿な)コンディションを考えると、自陣から攻撃フェーズを重ねていくとボールも滑る。相手ディフェンスラインも非常に早く上がってくる状況で、パスを繋げることは非常に難しかったと思う。なので、ロングキックを蹴り込んでいくことに関しては、非常にいい判断だったなと思います。ロングキックを積極的に使い、そこへのチェイス(追走)を整えながらアタックしていくところが上手くいっていたなと実感しています」

 ひたすら愚直に自分たちの拘りを80分間追い求めるのではなく、相手のプレー傾向や気温などのゲームの中での自分たちが置かれている状況を判断し、プレーを選択する賢さも、この1勝からは浮かび上がる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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