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エディージャパン3戦目で刻んだ歴史 金星の理由、殊勲の男は「タマ」…見え始めた「超速ラグビー」の実像

第1戦の敗因「決定力」「遂行力」でも進化

 最も顕著だったのは防御力の改善。試合後の会見で、共同主将のHO原田衛(東芝ブレイブルーパス東京)が「ディフェンスコーチのデイブ(デイビッド・キッドウェル・アシスタントコーチ)のシステムの中でファイトすることをこの1週間はずっとやってきた。ディフェンスは朝の練習ではずっとやっていたので、それが結果に繋がったのかなと思う」と語っている。試合前のPR為房慶次朗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の右目上の青い痣が、チームのハードな練習を想像させたが、23分のダブルタックルがその成果を示していた。

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 ミッドフィールドでのマオリのアタックに、WTB根塚洸雅(S東京ベイ)が相手の腰下をめがけて突き刺さると、間髪を入れずにLO桑野詠真(静岡ブルーレヴズ)が上半身をホールドするチョークタックルを決めて、完璧に相手の動きを封殺した。このタックルシーンでは、キッドウェル・アシスタントコーチによる「フィニッシュ・オン・トップ」呼ばれる、タックルをしながら相手の上に乗りかかるように倒れるスキルで、相手選手のサポートを遅らせることにも成功している。

 チーム始動から防御2人が襲い掛かるダブルタックルには取り組んでいたが、マオリ第1戦では、最初に相手の動きを止めるために低くタックルに入っても、オフロードパスなどでボールを繋がれるシーンが目立った。だが今回は2人目のサポートを早める意識を選手が徹底していた。攻撃、防御両面で最も目立つ最初の1人(ボールキャリアー、タックラー)の動きでは、イングランド戦、マオリ第1戦のほうが顕著に「超速」を感じさせたが、この日は、次のフェーズへとボールを生かし、殺すために重要なセカンドマン(2人目の選手)がより早くフォローする意識を徹底していた。

 防御の進化は数値からも読み取れた。世界的なラグビー情報サイト「ラグビーパス」のゲームスタッツを見ると、タックル成功率は第1戦の83%から89%へ上昇している。この数値は、一般的には「勝利チームの成功率」と考えられる84%目前から、「快勝」と考察できる領域へ上昇していることを意味している。それに比例して、ミスタックルの回数も24回から15回と大幅に改善された。参考までにマオリの成功率は89%から86%へと微減している。

 第1戦の大きな敗因となった「決定力」「遂行力」でも、進化を確認できた。手元のメモに基づく数字だが、相手チームのデンジャラスゾーンといわれる22mライン内への侵攻回数を見ると、マオリの7回に対して、日本は8回と大きな差はない。だが、マークしたトライ数を踏まえると、マオリが22m侵入で平均0.29個のトライをマークしていたのに対して、日本は0.38個を奪っていることになる。日本は前半3回の22mライン突破の内2回をスコア(トライ、PG)に繋げているが、マオリは5回の侵入でハンドリングエラー2回、キックミス1回、ノックオン2回と全てを得点に結びつけられなかった。ちなみにノックオンの1つは、PR為房、No8サウマキアマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ)による激しいダブルタックルが引き起こしている。ここは遂行力の優劣だけではなく、先に触れた日本の防御面の整備も影響している。

 マオリ第1戦後のコラムでも遂行力の背景として触れた、チャンスを自ら潰してしまう“攻め急ぎ”のプレーでも、1週間での修正が見られた。第1戦でアタック能力を印象づけたFB矢崎由高(早稲田大2年)だったが、同時に攻め込みながら反則などでボールをリサイクル出来ないシーンもあった。しかし第2戦では、後半開始直後のカウンターアタックから敵陣22mライン内へ走り込んだシーンで、相手防御にタックルをさせながらオフロードパスを使ってボールを生かすなど、課題を修正してきた。矢崎以外にも多くのメンバーが、第1戦以上に攻撃を継続させようと意図したパス、プレーを積極的に見せていたが、矢崎は前週からの成長をこう振り返っている。

「前回の試合で相手22mラインの中には多く入れたけれど(トライを)取りきれてなかった。それは自分たちがボールを大事にする意識の低いところ、ノックオンなどが多かった。だが、そういうボールを大事にするという所は、この試合へ向けては全員で話し合って出来たと思います。そこが改善されて得点に繋がったのかなと思います」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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