進化止まらぬラグビーリーグワン、世界クラスの大量来日だけじゃない理由 選手も肌で実感「毎試合キツい」
リーグワンの進化は日本選手の成長も影響
リーチも、リーグワンの進化には、海外トップ選手の流入と同時に日本選手の成長も影響していると指摘する。
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「海外のコーチはもちろんチームに大きな影響を与えているし、後は現役の代表選手の影響は大きいですね。世界チャンピオンの選手も何人もいる。(ピーターステフ)デュトイ(トヨタヴェルブリッツ、No8)と体を当てたり、アーロン・スミス(同、SH)と一緒にプレー出来るんですから」
デュトイは2019年のワールドラグビー年間最優秀選手で、同年、23年W杯での南アフリカ代表の連覇を支えたコアメンバー。スミスはニュージーランド代表の主力SHとして23年大会でも決勝の舞台で活躍している。そんな世界有数の選手と80分間、直接戦うことによる日本選手の成長をリーチは実感している。
「若手にも強い選手がどんどん出てきています。そういう選手は、2015年なら2人くらいしかいなかった。でも今は世界で活躍出来る選手がすごく増えてきています。ウチの選手で名前を挙げるなら、(原田)衛(HO)ですね。強さもあるし、賢い選手。ラインアウトスローもいいし、フィットネスもある。かなりトップレベルで通用する選手だと思います」
日本代表の欠かせないメンバーとして活躍してきたHO堀江翔太(埼玉WK)が今季限りでの引退を表明している中で、堀江と共に日本代表を牽引してきたリーチの目には、ポスト堀江として期待する日本選手も見えてきているのだ。
リーグの進化は数値からも読み取れる。今季と昨季のレギュラーシーズンを比べてみると、7点差以内の接戦は24試合から33試合と1.4倍に増えたのに対して、20点差以上のゲームは38試合から36試合とわずかだが減っている。この微減の内訳を見てみると、今季圧倒的な強さを見せてきた埼玉WKの20点差以上をつけた勝利が11試合に上っている。今季同様にリーグ戦を1位通過した昨季は、20点差以上の大勝はわずか5試合。プレーオフを制したS船橋も同じく5試合だったことを考えると、今季の埼玉WKの“独り勝ち状態”を除くと「大差負け」は数値以上に少ないと考えてもいい。
同時に注目したいのは反則数だ。昨季は1試合平均で12.13個だった反則が、今季は10.26に減少している。反則数を即進化とみなすのは早計だが、どの指導者も反則が敗因と成り得る深刻な問題であり、その抑制を重視しているのは、昨秋のW杯でも、世界クラスのコーチが集まるリーグワンでも変わらない。ゲームの質が上がれば、反則などのミスが勝負に大きく影響するのはラグビーの鉄則だ。ブラックアダーHCの「スタンダードのクオリティーを上げることが出来ている」という指摘に当てはまる数値と解釈していいだろう。
そんな進化を続けるリーグを「毎試合キツい」と力説するリーチだが、中でも印象に残る試合として1月14日に行われた第5節、三重H戦を挙げている。
「一発目の(三重)ホンダ戦。あれはキツかったですね。フィジカルも強かったが、いいコーチがいて、いいゲームプランを立ててきて、(BL東京を)こうやって崩そうというのを感じましたね。どんどんボールを僕らの裏に蹴ってきて、プレッシャーも受けてしまいました。ラインブレークも結構してきた。外国人選手が(フィジカル面で)強いイメージもありましたね」
最終スコアは40-12。前半を終えて26-5と優位に立ちながら、後半は14-7と圧倒できなかったゲームだったが、リーチが振り返るように、南アフリカ代表LOフランコ・モスタートや突進力のあるNo8ヴィリアミ・アフ・カイポウリらのフィジカルチャレンジに苦しみ、ディビジョン1昇格1シーズン目の相手に手を焼いたゲームだった。
リーグのレベルアップを感じる中で、BL東京が昨季のリーグ戦5位から2位へと浮上したことは、リーチにとっても大きな自信になったという。ここで、簡単なチームデータを見てみよう。BL東京の昨季からの数値を見てみると、1試合平均得点は34.9から34.6、失点で24.6から23.3、反則数も11.7個から10.8と微増減の範囲だ。強いて顕著な変化があるとしたら、チームランキングで失点数が昨季の6位から2位に上がったことくらいだろう。だが、数値上は大きな変化がなくてもリーチは進化に手応えを感じているのだ。
「今季の戦いぶりは自信になります。最後の最後に勝ちきれることは大事だし、リードを守り切ることも自信になります。どんな状況になっても、最後にトライを獲る、スコアする、守り切ることが出来るという自信があります」