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新生エディージャパンが目指す「30秒」の戦いとは サッカー名門アヤックスもヒントに“超速”へ進化

「目」も武器に「ゴリラの目を見ても何を考えているかわからないが…」

 速さへのこだわりは個々の選手のプレーや動作、そして組織や判断力に及ぶが、エディーは「目」をも武器にしようと構想を膨らませる。

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「最も重要なポイントの1つが、人間が生物の生態系のトップに立つ理由でもある目です。例えばゴリラの目を見ても、何を考えているかがわからない。それは人間の目にある(眼球の)白い部分がないからです。なのでゴリラ同士はお互い何を考えているかわからない。でも人間は、ラグビーでなら世界の中で本当にいい判断を出来るチームは、目を通して動きを見て、そして判断することが出来るのです。

 それを強化するために、どうやって行くかのアイデアは幾つかあります。もしかしたらAIを使っていくかも知れないし、それを加速して学んでいく必要があります。いま日本の選手を見ても、下を向いてプレーする選手があまりにも多過ぎます。なので、目を通して素早くコミュニケーションが取れるような状況に持っていかなければならない。それが出来れば、限界はないですね」

 簡単にいえばアイコンタクトなのだが、それを試合中に偶然、瞬間的に目が合ったために実現したプレーではなく、自分たちの常套的なスキル、コミュニケーション手段としてチームに落とし込もうとしている。ブリーフィングでは、AI技術について、世界各地の空港などで使われるNECの技術を引き合いに出して「グリーンロケッツ(NEC母体のリーグワン・ディビジョン2チーム)ももっとサポートをもらえば強くなるかも知れない」と冗談交じりに話したが、あながち笑い話でもないだろう。

 NECの持つ高い生体認証やモニタリングなどの技術を、先に挙げた判断力のスピードアップ、日本版「ディシジョンメークルーム」や、目によるコミュニケーションのスピードアップに使えないかと考えていたとしても、この指揮官なら不思議ではない。これを寄せ集めチームである日本代表で、メンバー全員に落とし込み、共有させるとしたら相当な時間や環境が必要だが、早ければ来月上旬にもスタートするミニ合宿や、リーグワン閉幕後の6月から本格化する強化合宿でのお手並み拝見になる。

 強化は、このような技術的な領域に留まらない。2015年大会でのエディーと代表チームの成功には「マインドセット」も大きくフォーカスされていた。当時の日本代表や日本のラグビー界に根付いていた負け犬根性を、「世界一厳しい練習」と豪語したトレーニングで鍛え上げる事で払拭して、どんな強豪相手でも勝とうという精神状態を選手の頭の中に植え付けたのも、エディーの手腕であり功績だったが、今回も新たなマインドセットを選手に求めていくようだ。

「以前もフィットネスを重視してきたが、いま必要とされるフィットネスは、スピードをいかに反復できるか。繰り返し高いスピードで走れるかです。そこはフィジカルの部分だけではなく、生理的なこともあるし、体がどう機能しているかも知る必要がある。そして、メンタルの部分はかなり大きなところだと思います。速く走るためにはキツさが伴います。なので選手たちのマインドセットを変えていく必要があるのです。選手が、このキツさが好きだという気持ちになれるようにしたい。キツさを乗り越えて、もっといけるというメンタリティを持つことが必要です」

 帰って来た指揮官は、選手たちに動作、思考、組織としての動きなどあらゆる局面でスピードを求め、テクノロジーを利用しながらも、メンタル面でも強化を推し進めようとしている。ブリーフングを聞けばどのような選手を求めているかも浮かび上がるが、敢えてエディー自身の言葉で、求める選手像を語ってもらった。

「日本に帰ってきてから、高校、大学のゲームを視察していますが、コーチングでは教えられないことをやっている選手は誰かという観点で見ています。ゲーム感覚、センスのあるような選手ですね。そして、もっと成長したい、もっといい選手になりたいと思っているような人材を見つけたいと思っています。人間は、ある一定のところまで努力をして満足するものです。そこが居心地がいいから。でも、椅子の背にもたれているのではなく、どんな時でも次に何があるのか、何をやるのかという前のめりになるような選手を見つけていきたい」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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