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「W杯で日本文化に感銘を…」「銭湯は毎日行ってるよ」 極東の日本に世界のラグビー大物が集まるワケ

日本の文化や生活環境に加え「リーグワンの質が上がったことが影響」

 実戦では、東京SGを下した府中ダービーでのWTBジョネ・ナイカブラのトライを引き出すキックパスなど、視野の広さと瞬時の判断で世界トップの司令塔ぶりを見せつける。頭の中にインプットされたプレーの選択肢を、状況に応じてスピーディーにパフォーマンスに繋げる機転と始動の速さで格の違いを証明している。同じピッチでプレーするFL佐々木剛は東京SG戦の後に、モウンガについて「まだ完全にはチームにフィットはしていないと思います。これから、もっとコンビネーションが進化するはず」と、まだチームを完全に把握していない段階でのパフォーマンスに舌を巻いた。ディビジョン1で昨季3位の得点力をみせたチームだが、この世界最高峰の司令塔の加入が、強みをさらに増幅させる期待は高い。

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 世界最高峰の司令塔の片鱗を見せはじめたモウンガだが、グラウンドを離れると、日本人にとってはありふれた、小さな子供をサドルの前後に載せた3人乗りの自転車さえ新鮮な驚きだったようだ。「自分もああして子供を載せた自転車に乗りたい」と新しい環境での生活に興味津々だ。

 いまでも日本をこよなく愛するカーワン、ジョセフらの時代から、日本特有の文化に触れ、暮らすことも大きな来日理由ではあったが、そこに日本のラグビーレベルが自分たちに見合うものへ進化しつつあることが、現役バリバリの選手の堰を切ったような来日ラッシュへと繋がった。クボタスピアーズ船橋・東京ベイを指揮して8シーズン目を迎えたフラン・ルディケ・ヘッドコーチ(HC)は、トップ選手の来日をこう読み解く。

「リーグワンの質が上がったことが影響していると思います。W杯前から優れた選手たちが来ていたが、そこでいいパフォーマンスを出していた選手たちのおかげでリーグのスタンダードが上がった。それを移籍を検討している選手が見たからだろうし、リーグ自体に、実際に日本でチャレンジしたい、やりたいという流れが作られたのだと思う。各チームの指導陣をみても国際レベルのコーチが多いし、そういうチーム、いいシステム、いい環境でやりたいというとこともあるし、リーグ自体も結構高いレベルで競り合う環境にある」

 ルディケHCの指摘は的確なものだろう。前身のトップリーグから、さらに事業化を目指すリーグワンに各チームが参入を決めたことは、チームとサポート企業側が運営力の強化に舵を切ったことも意味している。つまり金も人手も従来以上に力を入れることを容認したということだ。その一端が海外トップ選手の積極的な獲得であり、国際クラスのコーチ、スタッフの充実だった。リーグワンで今季ディビジョン1に所属する12チームをみても、昨秋のW杯出場選手を保有するチーム、代表チームでの指導経験を持つコーチ、スタッフが在籍するチームは共に11と、戦力と強化環境の充実にも目を見張る。

 このような高いレベルの強化環境と日本での生活に魅力を感じた選手が年々増加している。モウンガの言葉からもわかるように、西ヨーロッパを中心にした文化圏では、合理的な考え方をベースとした極端な個人主義が進み、治安の面でも日本ほど不安なく暮らせる地域は少ない。来日する多くの外国人選手が、結婚し子供を設ける世代だ。シーズンの半分は遠征というラグビー選手にとっては、妻や小さな子供を自宅に残す生活でも、日本では言葉の壁を差し引いたとしても不安が少ないのは間違いない。

 では、「前提」としたサラリーの面はどうだろうか。後編では急騰するビッグネーム獲得のためのマネーゲームと同時に、世界のトップ選手だからこそ感じる日本でプレーすることのメリット、そして受け入れる側のチーム、リーグ、ラグビー協会も含めた課題を考える。

(後編へ続く)

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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