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闘莉王が規格外の得点力を誇る理由 “攻撃的DF”生んだ「バレーボール」と「自立心」

バレーボールで磨かれた空中戦の強さと空間察知能力

 一方で宗像監督は、すでに闘莉王がセンターバックとして日の丸をつける未来を予測していた。

「日本には中盤から前にはタレントがたくさんいますが、このポジションは手薄ですからね」

 しばらくして日本のサッカーに慣れてきた闘莉王はボランチに復帰し、全国高校サッカー選手権千葉県予選の決勝では、自らチームを本大会出場への道を切り拓くゴールを決めている。一方で高校卒業後にサンフレッチェ広島に入団すると、すぐにセンターバックでプレーするようになるが、いきなりデビュー戦となった鹿島アントラーズとの開幕戦でゴールを決める勝負強さを発揮した。

 日本のサッカー界にはアスリートが少ない。確かにサッカーは、幼少期からのテクニックの修得が重要になるが、あまりに他の競技と両立させる環境に乏しい。その点、闘莉王は中学時代までサッカーだけでなく、同時にバレーボールも楽しんできた。空中戦の強さ、ジャンプするタイミングやバランス、それに空間察知能力などは、バレーで培われた可能性がある。さらにボランチとしてプレーすることで中盤でゲームを読む能力が養われ、十代で未知の国に渡って生活したことにより、プロとして生き抜くための自立心が備わった。

「一人で日本にやって来て、何もかも一人でやるしかなかった。一人で未来を切り拓かなくてはならないから、親にも頼らず、いつも真剣に物事に取り組むようになった。もしブラジルでプロになっていたら、適当なところで手を抜いていたかもしれません。僕は日本に来て大人になるスピードが早まった。日本が僕を一人前にしてくれたんです」

 それがプロとして、長く活躍できる最大の理由かもしれない。

(文中敬称略)

【了】

加部究●文 text by Kiwamu Kabe


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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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