闘莉王が規格外の得点力を誇る理由 “攻撃的DF”生んだ「バレーボール」と「自立心」
バレーボールで磨かれた空中戦の強さと空間察知能力
一方で宗像監督は、すでに闘莉王がセンターバックとして日の丸をつける未来を予測していた。
「日本には中盤から前にはタレントがたくさんいますが、このポジションは手薄ですからね」
しばらくして日本のサッカーに慣れてきた闘莉王はボランチに復帰し、全国高校サッカー選手権千葉県予選の決勝では、自らチームを本大会出場への道を切り拓くゴールを決めている。一方で高校卒業後にサンフレッチェ広島に入団すると、すぐにセンターバックでプレーするようになるが、いきなりデビュー戦となった鹿島アントラーズとの開幕戦でゴールを決める勝負強さを発揮した。
日本のサッカー界にはアスリートが少ない。確かにサッカーは、幼少期からのテクニックの修得が重要になるが、あまりに他の競技と両立させる環境に乏しい。その点、闘莉王は中学時代までサッカーだけでなく、同時にバレーボールも楽しんできた。空中戦の強さ、ジャンプするタイミングやバランス、それに空間察知能力などは、バレーで培われた可能性がある。さらにボランチとしてプレーすることで中盤でゲームを読む能力が養われ、十代で未知の国に渡って生活したことにより、プロとして生き抜くための自立心が備わった。
「一人で日本にやって来て、何もかも一人でやるしかなかった。一人で未来を切り拓かなくてはならないから、親にも頼らず、いつも真剣に物事に取り組むようになった。もしブラジルでプロになっていたら、適当なところで手を抜いていたかもしれません。僕は日本に来て大人になるスピードが早まった。日本が僕を一人前にしてくれたんです」
それがプロとして、長く活躍できる最大の理由かもしれない。
(文中敬称略)
【了】
加部究●文 text by Kiwamu Kabe