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箱根駅伝予選会に「不参加」の理由 中四国王者監督が語る“全国化”への本音「たった1年では…」

陸上部員は27名、関東の強豪校の約半分程度

「(参加資格である)1万メートルを34分切れる選手を揃えようと思えばできるんですけど、それだけだと出るだけになってしまう。関東の大学と戦うためには、スカウティングをして長距離の選手を獲得してこないといけないですし、例えばケニア人留学生も2名は必要になってきます。そうしてチームを作っていくと、たぶん5年はかかるんじゃないかな」

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 一番難しいのは、スカウティングだと尾方は言う。長距離のタイムを持つ選手の場合、その多くが箱根駅伝に出たいという。箱根を走りたいという気持ちを優先すると、地方の大学で力を伸ばすというところには、なかなか考えが及ばない。

「それだけ箱根がブランド化されているということです。箱根に行きたい、出たいなら関東の大学になってしまう。今はタイムのない選手も箱根に出たいと言いますからね(苦笑)。長距離に関しては、うちは箱根に出場できる大学に行けない選手だったり、中距離の選手をスカウトしています。関東と同じ路線でスカウトをすると、うちの大学の良さは出ないので」

 広島経済大の推薦入学には、タイムの基準を設けている。5000メートルは15分6秒50以内、1500メートルは3分59秒80だ。ちなみに関東の箱根常連校だと、5000メートルで15分以内が多い。

「タイムの基準を設けているのは、うちは自分1人でチームを見ているからです。自分が見られる人数と目が届く指導を考えると、タイムの基準が必要になりますし、30名を超えると難しくなります。青学(青山学院大)のように1軍、2軍でそれぞれコーチがついて、スタッフがいると別ですけど、うちはそんな余裕もないですから」

 広島経済大の陸上部員は、現在27名。関東の箱根常連校の約半分程度の部員数だ。少数精鋭で出雲駅伝や全日本大学駅伝で、関東の大学に一泡吹かせるのは難しいのだろうか。

「出雲は距離が短いので中距離の選手を上手く育てていけば可能性があるのかもしれないですけど、それでも戦力的にかなり難しい。現実的には地方の大学の目標は、関東に勝つというよりも僕らの地域は中四国なので、その出場枠を増やそうという感じで臨んでいます」

 地方の大学は身の丈に合った目標を立て、そこに向けて強化育成をしていく。目標が異なり、関東の大学との戦力格差が年々広がっていく中、「1年限定で箱根駅伝の枠を広げます」と言われたところで、地方の大学は出場を現実的に考えるのが難しい。

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佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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