「過去のW杯ではなかった」 4度目出場の堀江翔太、ラグビー日本代表「33分の19」に期待の理由
小倉順平のポジションは「SOで考えている」
小倉の選出は山中の落選が前提なのは間違いないが、ジョセフHCはメンバー発表会見で、その山中の落選をこう説明している。
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「山中は本当に素晴らしい選手です。でもユーティリティーの部分で、神戸で実際に10番をカバーするところを見られなかった。FBのスペシャリストの一番手は松島(幸太朗/東京SG)を考えている。もし松島に怪我があれば、レメキ、(セミシ・)マシレワ(WTB/花園近鉄ライナーズ)がカバーすると思っています。そういうカバーのところで山中が外れたということです」
関係者らを取材すると、これ以外の“話”も聞こえてくるが、会見での指揮官の説明は、他のポジションもできるユーティリティーとFBの優先順位で、2019年大会から15番を背負ってきたベテランを外したというものだった。その一方で、当初はFB兼SOという扱いだった小倉が、山中の立ち位置だけではなく、6月の合宿序盤からSOとしての可能性を高めていたのも間違いない。
6月の千葉・浦安合宿は、メディアへの練習公開は時間制限があり1日20分程度だった。その限られた時間内の攻撃練習で、SOでプレーする小倉の姿が印象に残った。合宿期間中に、元ニュージーランド代表SOでもあるトニー・ブラウン・アシスタントコーチに小倉のポジションについて聞くと、「SOで考えている。以前に代表、サンウルブズにも参加したし、リーグワンでのプレーも見てきたからね。そこにFBのカバーも考えている」と説明してくれた。そんなSOでの可能性を高めるなかで、山中の落選が小倉の残留をさらに後押ししたことになる。
小倉順平は、神奈川・桐蔭学園高時代からSOとして注目を浴び、主将だった2010年度の花園(全国高校ラグビー大会)では、同じ日本代表のFB松島幸太朗とともに、当時最強を誇った東福岡高と引き分け(31-31)、両校優勝に輝いた。今や常勝軍団の桐蔭学園だが、小倉主将が掴んだ日本一がチームにとっても初の花園制覇だった。
その後も、早稲田大、NTTコム(現・浦安D-Rocks)と実績を積み、2020年に移籍した横浜Eで、不動の10番として活躍する元日本代表の田村優との兼ね合いもあり、FBを中心に活躍してきた。横浜Eでの小倉の役割は、司令塔としての経験値、視野の広さを生かして、しんがりのFBから指示を出し、状況に応じてライン攻撃に参加する第2の司令塔だ。
実績から考えれば、小倉の立ち位置は松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、李承信(神戸S)に次ぐ“第3の10番”ということになるだろう。だが、持ち前の広い視野を生かして、アタック重視のジャパンのBK(バックス)ラインを動かせれば、定番の2人とはまた一味違った攻撃を見せてくれるというのは、期待を膨らませすぎだろうか。
小倉のボール回しを見ると、相手にギャップを作るために、ふっと溜めたパスや、飛ばしパスのタイミングなどに特有の感覚を感じさせる。パススキル(特にロングパス)やキックの飛距離は、W杯ベスト8クラスの司令塔としては、まだ足りないものを感じるが、横浜Eで見せた田村との連携によるアタックや、2人目の司令塔のような立ち回りでの、気の利いた周囲の生かし方を桜のジャージーでも見せることができれば面白い。