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ラグビーW杯まで1か月、日本代表の“精巧なパズル”は完成するか 国内前哨戦「1勝4敗」を検証

数値にも表れた日本代表の苦戦

 参考までに日本と対峙したフィジーのメンバー構成を見ると、先発総キャップ数は日本の「291」に対して「170」余り。サイモン・ライワルイ・ヘッドコーチ(HC)は、ここまでの5週間を「フェーズ1」と呼び、若手選手のテスト段階と位置づけ強化を続けてきた。そのため、世界屈指のCTB(センター)セミ・ランドラドラのようなトップ選手を日本遠征から外し、これから対戦するフランス(19日)、イングランド(26日)という世界屈指の強豪との試合でW杯モードに入る計画だ。

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 14人での戦いが選手に心理的な圧迫を加えたとも考えられるが、6月初頭から強化を続け、7月から5試合目の日本は、この試合でもミスを頻発させた。

 キックオフ直後に敵陣に攻め込んだが、得意の連続攻撃からSH(スクラムハーフ)齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)がハンドリングミスで攻撃のテンポを狂わせると、直後にはFB(フルバック)松島幸太朗(東京SG)がノックオンして好機を逸した。前半27分には自陣からクイックなパスを繋ぎ、日本らしいアタックでフィジー防御に重圧をかけたが、安易なパスミスで攻撃権を手離した。同33分には、数少ない敵陣22メートルラインを跨いだ攻撃を見せたが、SO松田からWTBセミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)へのトライチャンスになるはずのキックパスは、タッチラインを越えてしまった。

 苦戦は数値にも表れている。勝負の流れに大きく影響する前半に、トライチャンスとなる敵陣22メートルラインを突破した回数は、日本のわずか2回に対してフィジーは5回。フルタイムでも日本7回、フィジー13回という数値が勝負を物語る。スタンドから見た印象では、少ないチャンスを攻め急いで、武器である精度の高い連係プレーを見せられず、結果的に自滅するというパターンが目についたが、このようなシーンは、ここまでの5試合を通じて顕著だった。連続攻撃でテンポアップして手にしたチャンスを、トライ、PGというスコアで終わらせるまで継続できた2019年のアタックには辿り着けていないというのが、今のジャパンの姿だろう。

 そんなチーム状態を、選手側はどう見ているのか。前出の松田のコメントだ。

「今回も14人でもボールをキープして我慢強くアタックすれば、相手のスペースは見えていたし、空いているところはたくさんあった。そこにボールを運ぶところでミスがあったが、やっているラグビーはいい方向を向いていると思う。前半我慢して、後半いいラグビーをして最後2トライを取れたのは、14人全員がしっかりと動いて、自分たちのラグビーが機能していた証拠だし、いい要素はたくさんあったかなと思います」

 確かに、フィジー出身のナイカブラ、マシレワが終盤にマークした2トライは、スピードのある連続攻撃で相手防御が対処できない状態から奪った、日本の強みを感じさせるものだった。松田らメンバーたちは、後半の攻勢の中に、自分たちの“取り組み“の感触を掴んでいたのだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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