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W杯前哨戦に見えたものとは? 3連敗のラグビー日本代表、リーチ“初レッド”で先送りされた課題

連続攻撃から反則を誘いPGから得点

 リーチの早すぎるレッドカードで、ゲームが台無しになってしまったと嘆くファンも少なくないだろう。しかし、すべてが否定的な80分ではない。修正を感じさせるプレーも読み取ることができた。攻守で接点に入る2人目、3人目のサポートへの意識、反応の速さは過去の2試合を上回っていた。そのため次の攻撃への球出しがテンポアップされ、結果的に連続攻撃についてこられないサモアの反則を誘い、後半2、7、17分にはPGを奪い取っている。

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 後半21分のPGは、キックからの防御で重圧をかけたことがサモアの反則を引き出した。W杯で日本がやりたいプレーによるスコア。テンポを掴みつつある攻撃に、WTB(ウイング)松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)は「(2人目、3人目の意識は)練習からやっていますし、練習が終わった後にやる選手もいます。だんだん良くなっているかな。後は自分たちのミスを少なくすればいい」とポジティブな感触を掴んでいる。

 手の内を完全には見せない思惑も感じさせた。先発15人の総キャップ数が100程度のサモアに対して、日本は353キャップ。出場メンバーの顔触れを見ても、先にも触れたサモアほどの温存は感じさせなかったが、エース格のCTB(センター)ディラン・ライリー(埼玉WK)が、このゲームで効果的にボールを持つシーンはほとんど見られなかった。簡単なノックオンなども見せたのは気懸りだが、攻撃では徹底して若手のCTB中野将伍(東京SG)を突っ込ませるなど、W杯本番に用意するプレーを封印して意図的に役割を定めて戦っていたと判断してもおかしくないプレーが目についた。

 セットプレーからのライン攻撃で、強豪国の多くはバックドアと呼ばれる深めの立ち位置の選手にボールを持たせて、相手防御のプレッシャーをかわしながら攻めるアタックを使っている。メリットは、深い位置でパスを受けた選手がスペースを持てること、フラットな位置に立つ外側の選手にロングパスを放ることで、相手防御を崩す効果もある。しかし、札幌での日本代表は、深い位置のラインでそのままボールを動かし、状況に応じてキックを使っている。深さと浅さのコントラストはあまり効果的には使っていない。戦術に長けたトニー・ブラウン・アシスタントコーチのことだ。今は多くを見せていない浅い位置取りの選手による仕掛けを本番で使うのか、もしくは他国のセオリーを覆すような裏技を極秘裏に用意してくるのか。はたまた、策のないまま開幕を迎えるのかに注目するしかない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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