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W杯前哨戦に見えたものとは? 3連敗のラグビー日本代表、リーチ“初レッド”で先送りされた課題

不安定だったスクラム、試合中の修正力に課題

 リーチの退場にフォーカスが向けられるなかで、9月開幕のW杯へは他にも課題を露呈している。9、15日のオールブラックスXV(フィフティーン)戦でも勝負どころで押し込まれるなど不安定さを垣間見せたスクラムだ。

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 この日もデータ上では自分たちのスクラムでの失敗は1回だったが、サモアFWに押し込まれる場面が何度もあった。結果的に決勝点となった後半23分のサモアのトライも、日本の不用意なノックオンによる相手スクラムからの左展開で、ライン防御を簡単に突破されて奪われた。スクラムで重圧を受けたことで、FWのカバーが遅れて手薄な防御を突かれたのだ。

 スクラムに関しては、結果的には相手のミスで大事には至らなかったが、開始直後にもサモアの右展開に日本のFWが防御に行けずにスペースを与えてしまっている。おそらくサモアのコーチ陣は、スクラムで日本FWの足を止めれば外側が手薄になると分析していたのだろう。オールブラックスXV戦でも許したスクラムからのイージートライは、W杯本番でも対戦相手が狙ってくるのは間違いない。

 スクラムの要で、ゲームキャプテンも務めたHO(フッカー)坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)は、「(試合中に)修正するのに少し時間がかかった。本番へ向けて、もっと早く直さないといけない」と組み負けたシーンよりも、やられた後のスクラムでの修正力への不満を口にした。この修正力も、日本選手の勤勉さが生み出す強みとして2019年大会の躍進を支えただけに、今後どこまで磨き上げることができるかが、フランスでの勝敗に影響するはずだ。

 スクラムと同時に、課題と感じさせたのがタックルだ。6月の浦安合宿で取り組んだリーグラグビー仕込みのタックルによる強いヒットは、場面場面でサモア戦でも見ることができた。だが、相手マークを抜くスキルとスピードに長けたニュージーランドの準代表とは違い、サモアは体重の重さ、体の大きさを武器に真っ向勝負してくる的の絞りやすいチームだ。前任のエディー・ジョーンズHC時代から本腰を入れたフィジカルストレングスと、海外勢が大量に代表入りしてきた恩恵にも助けられ、日本が真っ向勝負の相手なら太刀打ちできるようになったことが、最近のサモア戦勝利にも影響している。

 しかし、この日の札幌での日本代表は、前半37分に奪われたサモアの初トライも、密集周辺のサモアの連続攻撃を止められずに最後はゴールラインを割られている。1対1で抜かれるシーンも目立った。過去2試合のコラムでも指摘したように、単発のタックルでは渡り合う場面があっても、防御ラインや面での防御まではいまだに熟成していない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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