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井上尚弥、かつて記者にも求めた期待を煽る記事 落ちたモチベーションが再び「最強」に戻るまで

入場後にリングで歓声に応える井上【写真:荒川祐史】
入場後にリングで歓声に応える井上【写真:荒川祐史】

多くの名ボクサーが夢破れた「階級の壁」への挑戦

「ランキング選手との試合(防衛戦)とタイトルを獲り合う試合を比べると、事前の練習から気迫が違うし、向かっていく気持ちも違う。どの試合も同じ気持ち、同じ練習量、同じ仕上がりのつもりだけど、やっぱり心のどこかで違いが出てきてしまう」

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 相手のレベルによって、リングで感じる“ゾーン”に変化があった。「普段だったら研ぎ澄まされていて相手しか見えていないけど、そこが欠ける」。時に記録にも目を向け、昨年12月にアジア人初の4団体統一を達成。「戦いたい相手がいない」。強者とされる選手は全員倒してしまった。

 世界No.1だから味わうもの。ベストパフォーマンスを発揮するために「適正階級でやるのが一番大事」と信条に置いてきたが、それを上回るほど「挑戦」を欲した。

「毎回、ヒリヒリする技術戦をしたいから上げる。そういう緊張感が階級を上げれば出てくる。体格はバンタム級が一番の適正階級だけど、バンタム級ではやり残したことがない。強さを追い求めたい。そういう状況でスーパーバンタム級への挑戦を決意した。ここから先が本当の戦いになる」

 1.8キロ重いスーパーバンタム級に転向。相手のパンチ力、身長、上半身のフレーム、耐久力も変わる。多くの名ボクサーが「階級の壁」を味わい、夢破れてきた。身長165センチ、リーチ171センチの井上。「毎回階級を上げる時は不安がつきまとう。今回は(デビュー時の)ライトフライ級から上げてきて、自分の骨格、体格をオーバーしていく」。挑戦心が練習の質を上げた。

 転級を見据え、2021年秋から同門の元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーにフィジカルトレーニングの指導を依頼。今度は体を階級に合わせていく。選手間でも過酷と恐れられる通称「ヤエトレ」で地道に肉体強化をしてきた。広背筋、腹斜筋、下半身全体も見違えるほど変化。「八重樫さんはマニアなので」。37歳まで現役だった先輩から栄養摂取についても学んだ。

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