日本の育成環境では「成長スピードが減速」 U20ラグビーHC、学校単位の現状に持論
日本ラグビー協会が考える20代前半の強化
では、統括団体の日本ラグビー協会は、U20世代から大学卒業後、つまり20代前半の世代をどう位置づけているのか。代表という名称の全カテゴリーの事業遂行責任者(CRO)を担う中山光行氏は、現状をこう指摘する。
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「まず大学チームがユース世代の強化を担ってくれているのは間違いない。その一方で、協会としてU20、U23世代をどう位置づけているかというと、やはりこれは明確にパスウェイ(トップアスリートへの道筋)です。協会として高校代表、U20代表の強化はやってきた。正代表との間はジャパンフィフティーンという名の下で、いろいろな選手が入ってきて強化していく流れです。同時にNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)というチームがあるが、これは高校、大学世代、ジャパンフィフティーンを含めた総称です。そこから条件に合った、必要に応じたチーム編成をして国際試合を行い、大会に参加していく。そこの試合数をもっと増やしてくれと(協会内では)言っています」
日本協会の予算で大きな幅を占めるのが、15人制男子日本代表だ。チームスポンサーなどの収益も大きいが、同時に強化合宿、遠征などの支出も膨大な額になる。自分たちで稼いだものを活動費に充てているのだが、ユース強化の担当者からは「スタッフには、ぎりぎり交通費程度の手当で運営している」という苦言もあるほど、15人制代表以外の予算は潤沢とは言えない状況だ。だが中山氏は、U20と正代表の間の世代の強化は活動資金も含めて、さらに広げていける可能性があると言う。
「予算がないなかでも、例えばU23などの活動は工夫すればできると思います。極力無駄を省いても何千万のお金は捻出できないけれど、贅沢しなければ可能でしょう。もちろん、あるに越したことはないし、正代表のようなフルスペックの環境を用意することは難しいが、強化合宿、海外遠征などの活動自体は可能だと私自身は思います」
リーグワン所属チーム側でも、自分たちに選手を供給してくれるU20、大学世代の育成には当事者として強い関心を持つ。元日本代表で、東芝BL東京で選手採用と同時にアカデミーコーチなども務める望月雄太氏のアイデアも興味深い。
「U20を卒業した世代の中で、大学4年生はアーリーエントリー制度がある。それより若い大学3年までの世代でU22、23代表のようなチームを編成して海外遠征や海外チームとの対戦ができればいいし、もしできないのならリーグワンのBチームとの試合を組むことで強化環境を作れるのではないか。このチームで頑張ることが、代表への道筋にもなるし、リーグワンチームへのアピールにもなるという意味では、代表強化はもちろん、選手にもリーグワンチームにもメリットがある」