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揺れる高校ラグビーの土台 予選参加“3チーム以下”が7県、深刻な出場校&部員数の減少

山形南監督が描く中学、高校の枠を超えたラグビー普及

 部活を続けた3年生のFB(フルバック)小関一輝主将にも、仲間たちの決断の理由を聞いてみた。

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「去年1人で(部に)残ってくれた先輩が、僕たちのために戦ってくれたことが本当に印象深かった。その先輩に対するリスペクトが大きくて、残るという決断を決めた部員が多かったと思います。部活をしながらの勉強という面では、周りの(部活を辞めている)子たちは学業一本に専念できていた。でも、自分たちはどう上手く両立するかと考えながらやってきたことが、今後のステージでも必ず役立つことだと思います。残った生徒は絶対に成長するなと思っています」

 3年間を懸けたラグビーでの挑戦が終わった直後に、これだけのコメントができる高校生がいること自体、すでに将来が楽しみだが、ラグビーと受験という難しい挑戦の両方を続けてきたマネジメント力は、必ず人生の様々なフィールドでプラスになることは間違いない。

 文武両道に挑む部員たちと一緒に奮闘を続けてきた阿部監督は就任3年目。現役部員同様、花園は初体験という若い指導者だが、この3年間の経験で、山形でのラグビー普及への思いを巡らせている。

「うちのチームは現在26人の部員がいます。山形の競技人口が少ないなかで、通常30人近く確保できているのは恵まれていますが、3年間やってきて、中学、小学生の子供たちと高校生の繋がりをもっと作ったほうがいいのかなという気がしています。少人数かもしれないですが、むしろ人数が少ないからこそ、いろいろな学年を混ぜて、いろいろなことに取り組むべきだとはすごく感じています」

 高校、中学の枠を超えての普及活動には障壁もあるように思われるが、このチームだからこそ実現できる可能性もあるという。

「うちのチームは初心者がほとんどです。なので、新入部員だと先輩たちよりもむしろ中学生たちとタックルなどの初歩的な練習をしたり、栄養面を考えた食事の講習会のようなものも一緒に受講してもいい。こういう学年を問わない取り組みや、子供たちにラグビーの面白さを伝えることで、山形のラグビーが盛り上がるんじゃないかと思います」

 ラグビー協会でも様々な普及の取り組みは継続的に行われているが、阿部監督のような目線を低い位置に置くことで見えてくるアイデア、取り組みは、現場にいないと目も手も行き届かないのが現状だ。山形や鳥取のような競技人口で苦戦が続く地域のダイレクトな声に耳を傾け、協会もサポートに手を差し出すことで、プランを現実の競技人口拡大の施策に転じていくことが重要だろう。

 阿部監督が語る問題や課題は、部員数、チーム数が少ないチーム、地域に限ったものではない。後編では、花園常連校と言われる強豪チームを率いる指導者の視点を紹介したい。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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