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揺れる高校ラグビーの土台 予選参加“3チーム以下”が7県、深刻な出場校&部員数の減少

高松北が活用する「せとうち留学」の制度

 米子東と同じ大会第1日で花園を後にした香川・高松北も、部員数、参加校数という戦いをなんとか乗り越えて夢の舞台に立った。香川県予選の参加校は3チーム。高松北の花園登録選手は、倉吉東の15人よりは多いが、わずか18人だった。3人しかメンバーを入れ替えることができないなかで、留学生も擁する大分東明に0-130と大敗した。

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 試合を終えた高木智監督は、18人の戦いぶりを淀みない声でこう言い切った。

「凄いと思いますよ、ホンマに。まだ始めたばかりの子が6人くらい出場して、あんな(強豪)チームとよく体張ってやるなと思います」

 この1年の部活を聞くと、やはり人繰りとの戦いだったという。

「全国的にそういうチームが多いと思いますが、今年は夏まで部員は10人でした。練習試合も合宿もできませんでした。そこから、野球部から5人、バドミントン部などからも入ってきてくれて、なんとか18人になった。15人で試合ができるようになったのは10月くらいですね。それで、この花園第1グラウンドで、あのチームとやるなんて、こいつら凄いなと思います。夏までの活動で、みんな(部活を)諦めなかったんです。諦めないことを、私も選手から学びました。だから、この試合前にも諦めるなと話して送り出しました」

 完敗に終わったが、60分間決して諦めない15人の姿は観戦した誰もが見て、感じ取ることができたはずだ。そして敗戦後の高木監督にも、チーム、地域での選手確保の取り組みを聞いた。

「みんな頑張っていると思いますよ。鳥取も香川もね。頑張っているけれど、やはりラグビーをやる環境がないので、うちみたいに今回の10人からスタートしてということになる。香川では2年前から、教育委員会が『せとうち留学』という入試制度を始めたんです。全国から、香川で挑戦したいという子を募っています」

 この制度を利用して入学してきたのが、CTB(センター)で先発した普門晃輔(2年)だ。東大阪市出身で、花園ラグビー場は「家から自転車で20分くらい」(普門)。わずか15歳で「どうしても花園に出たかった」と単身、香川での挑戦を始めたが、里帰りして憧れの花園のピッチに立った。何度も力負けして、タックルを弾き返されたが、前半20分には突進してきた185センチ、111キロの留学生NO8ダウナカマカマ・カイザ(3年)をタックル一発で止めるなど、“留学生”の意地も誇りも見せた。高木監督は「知り合いのところで紹介してもらえた子です。大阪から、こっちを受験してくれた可能性を持った選手です。せとうち留学では1年生にも2人の選手がいるので、この制度で3人が入部してくれています。毎年知り合いのところを回って、(制度の)資料を渡しています。そこに学内では、部員と私で新入生を勧誘して部員を確保しています」と、県外からの選手にも門戸を開き競技人口確保に奔走する。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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