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“最強軍団”NZに7点差惜敗の真相 ラグビー日本代表、数字が示す進化とW杯への課題

満員の国立競技場に降り立ったオールブラックスがハカを披露【写真:JRFU】
満員の国立競技場に降り立ったオールブラックスがハカを披露【写真:JRFU】

試合で最初に驚かされた日本のラインアウト

 2週間前のオーストラリアA代表第3戦は、ノーガードの打ち合いのような展開を4点差(52-48)で逃げ切った。当コラムでも書いたように、他の強豪国と比べて完成度の高いチーム作りが必要な日本代表ならではの“時間”との戦いを続けながら、ようやく掴んだ1勝だった。

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 しかし、合理的に考えれば世界ランキング9位のセカンドチームと52-48という大味な試合を演じたチームが、2週間という準備期間、しかもその前半1週間を選手のオフに充てたなかでオールブラックスを倒すのは容易ではない。チームが今回のビッグマッチへ向けて再集合したのは、試合の7日前。残念ながら練習は非公開で行われたため、チームの決戦直前の取り組みや熟成度合いを直接見ることはできなかったが、7点差の接戦は7日間での進化ではなく、ジョセフHCが語ったように、これまでの6週間で積み上げてきたものが、ようやくゲームの中のパフォーマンスとなって表れたということだろう。

 試合で、まず驚かされたのはキックオフ直後の日本ボールで初めてのラインアウトだった。中盤でのラインアウトは、主将のHO(フッカー)坂手淳史(パナソニックワイルドナイツ埼玉)のスローがやや敵陣に逸れたところを、FLリーチが好捕して確保した。世界の流れでは、ラグビーで相手防御との間隔が最も広がる(20メートル)ラインアウトは重要な攻撃の起点と認識されている。

 モールでは威力を見せる日本代表だが、その前提となるラインアウトは2019年W杯後の大きな課題の1つ。特に序盤戦のジャブの打ち合いのような展開のなかで、攻撃の流れを掴むためには重要なラインアウトを確保できない場面が多かった。オーストラリアA代表との3連戦では、通算のラインアウト成功率は84%と安定感は向上してきたが、第1戦で初めてのスローイングをミスするなど課題も残した。しかし、今回の試合では初めてのラインアウトから合計10回をすべて成功。ラインアウトから直接トライに繋がるプレーはなかったが、ボールを確保して攻撃時間を伸ばし、最強軍団に余計なプレー時間を与えなかったことは、クロスゲームに持ち込む要因の1つになった。

 ラインアウトの進化について、捕球役のジャンパーも務めるリーチは「良くなりましたね。対策して、いつもよりも早く準備してきたので、その成果が出ています」と語っている。詳細には触れなかったが、スロワーのHO坂手主将のスキルアップと同時に、リーチ、身長201センチのLO(ロック)ワーナー・ディアンズ(BL東京)らジャンパーとのコンビネーションの熟成は間違いない。比較的シンプルなサインでのラインアウトが多かったことから、秘策よりも精度の向上を評価していいだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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