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“体格至上主義”は愚の骨頂 英雄クライフも重視した、小柄なサッカー選手に備わる利点

サイドから仕掛ける選手は世界的に小柄な選手が多い

 ただ、フィジカル能力を上げることは、サッカーの質を上げるよりも簡単にできる。その手っ取り早さに安易に流されやすい。テクニックはなかなか身につかないものである。効率的に戦うには走量やスプリント数を増やし、大きな選手で高さや面をカバーしたほうが簡単で、ある種の諦念と効率化の波が、サッカーの一部を押し流したのだ。

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 しかし、原点を忘れるべきではない。

 攻撃は主体的ポジションの特性があり、体格差で勝利できる範囲は狭いだろう。敵も体格で勝負してきて、そこに差は出ないからだ。やはり、技術センスを高めた選手がいることによって、アドバンテージを取れる。

 事実、欧州の強豪クラブには、サイドから仕掛け、1人で崩せる選手がいる。彼らの体格は大きくない。レアル・マドリードのブラジル代表ヴィニシウス・ジュニオール、リバプールのエジプト代表モハメド・サラー、パリ・サンジェルマン(PSG)のフランス代表キリアン・エムバペなど小さくはないが、身長は170センチ台である。PSGのアルゼンチン代表リオネル・メッシ、マンチェスター・シティのイングランド代表フィル・フォーデン、ベティスのフランス代表ナビル・フェキルなど170センチ前後の選手も少なくない。

 攻撃的ポジションでは、体格よりも技術とスピードの融合が求められる。大柄であることは、大した優位性ではない。

 繰り返すが、ポジションによって体格は度外視すべきだ。

 実は日本人は、サイドから崩しに入る選手の宝庫である。もともと大柄でなく、俊敏性に優れ、技術をコンビネーションで生かすことに喜びを感じるキャラクターが多い。久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)、中島翔哉(アンタルヤスポル)、相馬勇紀(名古屋グランパス)、乾貴士(清水エスパルス)、松尾佑介(浦和レッズ)などは、いずれも170センチ前後のアタッカーだ。

 巨星クライフ、ご明察である。

(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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