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出版社社長でラグビー協会の仕掛け人 異色の指導者が“原石”発掘に情熱を注ぐ理由

3日間のキャンプには強豪校でなくても、一芸に秀でた高校2年以下の選手が集まった【写真:吉田宏】
3日間のキャンプには強豪校でなくても、一芸に秀でた高校2年以下の選手が集まった【写真:吉田宏】

大学から声をかけやすいように高2以下に限定

 キャンプ参加者の対象を、各高校チームのレギュラー選手が多い3年生ではなく、2年生の17歳世代としているのもゴリ流の工夫と思いやりだ。

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「大学から声をかけてもらうためには、高校3年生じゃないんです。高2の子を合宿に呼べば、翌年の大学チームのリクルートの時に声をかけてもらえるんです。だから高2優先です。参加者を17歳に限って、16歳も何人かいる。大学の監督が来年の新加入選手を考えた時に、目玉になるような有望選手がまず重視される。それにプラスして、このキャンプに参加した子を『ああ、ビッグマン&ファストマンにいた選手だね』と獲得してくれる可能性がある。注目選手よりも、こっちの子たちのほうが他大学との競合は少ないので獲りやすいですしね」

 そのため、ゴリ自身が関東大学対抗戦、リーグ戦、関西大学リーグの各1部チームすべてと、知り合いの指導者がいる2部チームの監督、コーチにキャンプ視察の誘いを続けている。取材した合宿2日目も、5チームほどの大学1、2部指導者がキャンプを訪れ、原石の秘めた輝きを見逃すまいと熱い視線を注いでいた。ゴリは、「なるべく多くの監督、リクルーターに来てくださいと声をかけてきた。選手たちも、見てもらうと気持ちが変わってくるんです。『誰か来てるよ』『〇〇大(監督)だよ』とね」と、今まで人知れずラグビーを続けてきたような選手たちの意欲、野心を刺激することも大事なことだと捉えている。

「こういう合宿に参加したいという子もいれば、よく分からないまま送り込まれた子もいる。思い出作りレベルの意識の子もね。でも、ここに来た子たちには、なんとか次のステージでラグビーをやろうと思ってもらいたい。だからチャレンジするための可能性だけは作ってあげたい」

 現役時代のプレースタイルは豪放磊落なゴリ。このプロジェクトの推進にも、現役時代のような突進力もプラスに働いているが、心の中は繊細だ。

「今は生活が楽じゃない家庭の子も少なくない。ある地方では500円のものが、東京じゃ1000円する。全国各地で物価もずいぶん違いますからね。だからこそ、授業料免除の枠がないと大学に行かせられないというのは、よくある話なんです。TIDに呼ばれましたという実績があれば、授業料免除の枠を獲れる可能性も出てくるんです。だからこういうリアルキャンプをやって、彼らに参加してますよという免罪符が作れればいいなと思っています」

 名もなき高校チームで3年間を過ごしただけなら、強豪高の部員でもファーストジャージーを着られずに卒業したら、大学からも声をかけてもらえないかもしれない。そんな選手が、TIDというお墨付きで門戸が開かれる可能性があるなら、ゴリはかすかなチャンスでも諦めない。キャンプに集まった名もなき太っちょやチビッ子選手のために。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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