サニブラウンが世界の8人に残るまでの5年間 18歳で米国挑戦、全ては「その1mmを縮める為に」【世界陸上】
オレゴン世界陸上が16日(日本時間17日)、米オレゴン州ユージンのヘイワード・フィールドで第2日が行われた。男子100メートル決勝では、同種目日本人初のファイナリストとなったサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が10秒06(向かい風0.1メートル)で7位。歴史の扉をこじ開け、世界で8人しか立てない舞台に立った。米国の大学に進んで5年間。苦しい日もあった海外経験を乗り越えた裏には、日本陸上界を想う姿があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
オレゴン世界陸上
オレゴン世界陸上が16日(日本時間17日)、米オレゴン州ユージンのヘイワード・フィールドで第2日が行われた。男子100メートル決勝では、同種目日本人初のファイナリストとなったサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)が10秒06(向かい風0.1メートル)で7位。歴史の扉をこじ開け、世界で8人しか立てない舞台に立った。米国の大学に進んで5年間。苦しい日もあった海外経験を乗り越えた裏には、日本陸上界を想う姿があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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記憶すらできない景色だった。日本人未踏の世陸100メートル決勝。名前をコールされても表情一つ変えない。自分の第1レーンだけを真っすぐに見つめ、極限まで集中力を上げた。「やってやろう」。静まり返ったオレゴンのトラック。ピストル音が大歓声の合図となった。
スタートはやや遅れ気味。だが、決して譲らない。人類最速を決めるレースでくらいついた。トップとは体2つほどの差。堂々の世界7位だ。
「全く覚えてないです。覚えてないです」
一瞬で終わる世界最速決定戦。サバサバと振り返りつつ、その笑顔に確かな高揚感が溢れた。「断片でしか覚えていない。無我夢中すぎて」。思い出せたのは、視界の端に少し映った右横2人の姿だけだった。
レース後の取材エリア。微かに蘇る感触を言葉に換えた。
「独特の緊張感だった。歓声もそうですし、準決勝ほど緊迫していなかった。みんな、準決勝は『(決勝進出へ)抜けよう、抜けよう』と緊迫していた。決勝はみんなリラックスして、自分の走りをしようという感じ。(フィニッシュ後は)普通にきついなと。やりきったなと。悔しかったけど、それでも全力を出し切ったので、まあまあかな」
そして、日本人が誰も歩めなかったここまでの道のりを思い返した。
「決勝に残って、決勝で走って、今まで自分がやってきたことが良かったのかなと思えた。海外に来て、大学に来て、プロになってチャレンジしたことは自分にとっては正解だったのかな」
世界のファイナルに残りたい。高校卒業後、夢を抱いて海を渡った。米フロリダ大に進学。名門で走りの極意を吸収した。最初は各国各地から集まる選手の訛った英語やアクセントの違いに悪戦苦闘。米国の大学では勉強も疎かにできない。将来、陸上を離れた時を見据え、スポーツマネジメントを専攻。テスト前は夜中まで教科書と向かい合った。